ダーク・ファンタジー小説
- Re: 嫌いだ【オリキャラ募集中】 ( No.5 )
- 日時: 2016/02/13 23:58
- 名前: riyal (ID: bUOIFFcu)
第1話 ルキちゃん
『大丈夫?怪我してない?』
「うん、してない」
『そっかー、良かった!』
あはは!って、笑う。
この子の名前は、ルキちゃん。
ルキじゃなくて、ルキちゃんだって、最初に会った時言われた。
ルキちゃんとなら、ボクは喋れる。
『じゃ、帰ろっか!』
「…ルキちゃんは今日は何処に帰るの?」
『そこらへんの安いホテル』
「そう」
ルキちゃんには家が無いらしい。ボクの家で住めば、と思ったけど大体ルキちゃんは血だらけで帰るから流石にご近所さんに怪しまれると思ってやめた。まあそれ以前に、ルキちゃんにこの話したら断られたし。
『今日はなんと、着替えを持ってきております!』
「え、珍しい」
『珍しいでしょー。でも偉いでしょ!』
「うん」
『いやー、5人も殺ったらさすがにベトベトかなって思ってさ』
「なるほど」
ルキちゃんはボクの目も気にしないで着替え始めた。
デリカシー無いと思う。
ルキちゃんはよく喋る。対して、ボクはあまり喋らない。けど、そんなことお構いなしって感じでルキちゃんは喋る。
…こうしてボクが黙ってても、
『今日はやっぱ疲れたなー!だって5人だもん!ま、所詮中学生だし失敗はしいと思ったけど!うっわ、結構にこびりついてる、やだなぁ。汚ったない…まあいっか、クリーニングに出そ!ていうかナイフ錆びないかな?大丈夫かな?大丈夫だよね拭いとけば!全然大丈夫!よーっし、着替え終わった!行くよーっサンー!立って!』
喋りまくる。
無言で立ち上がり、普通にそこらへんにいそうな女の子の恰好になったルキちゃんについていく。
ルキちゃん。
まだボクは、ルキちゃんが何者なのかわかんないよ。
いい加減教えてよ。
それらの言葉をぐっと飲み込み、また喋り出したルキちゃんと小屋を出た。
ボクが監禁された、煤けて汚れた壁の小屋を。
- Re: 嫌いだ【オリキャラ募集中】 ( No.6 )
- 日時: 2016/02/13 23:59
- 名前: riyal (ID: bUOIFFcu)
第2話 ラン
『じゃーね!また虐められたら呼ぶんだよ?サン!』
「うん。バイバイ」
ルキちゃんと別れてからの帰り道。
薄暗くなってきたので早く家に帰ることにした。
家の中。
父、母、兄、姉。
誰もいない。
当たり前だけど。
寂しくなんてないけど。
悲しくなんてないけど。
…どうしても、泣いてしまう。
静かに泣いて、ずっと泣いて。
泣けど泣けど枯れない涙を、また流して。
惨めでしょうがないけど、そんな惨めな姿でも泣いて。
空間に、求めた。
早く来てよ、いるんでしょ。
何で出てこないの。意地悪だよ。
ねぇ…
ラン!
「呼んだ?」
「うんっ」
ランもまた、ボクが喋れる人の1人。
ルキちゃんとランだけだ、ボクが喋れるの。
やっぱりちょっとしか喋らないけど。
どうしても泣いちゃった時、ランに来てもらう。
ランがいてくれれば、平気。
「夕飯どうするの?」
「どうしよう」
「そだ、食べに行こうよ」
「お金無いよ」
「大丈夫。ランが出す」
ランはこうして外食に連れて行ってくれる。
ありがとうって言ってみたいけど、何故かいつもありがとうって言おうとすると声が出ない。
口を動かしても息しか漏れてこない。
何でだろうなぁ…
そんなことを思いつつ、ランと出掛けた。
- Re: 嫌いだ【オリキャラ募集中】 ( No.7 )
- 日時: 2016/02/14 00:01
- 名前: riyal (ID: bUOIFFcu)
第3話 策略
目の前の子。
その子に向かってあたしは喋ってる。
『あたしの為にはしょうがないんだってばぁ』
さっきからそんなことばっかりずっと。
どうしたってあたしが死んじゃえばサンを守りきれない。その為には何が必要か。
…悔しいけど、お金だ。
でもね、殺し屋がまともに金稼ごうなんて、そんなの無理。
だからあたしはこうして頼んでる。
頼むってったって、最後は相手にYesと言ってもらう。
『君だってあたしと組んだ方が得でしょ?』
その子はずっと黙ったままだ。
…さてまあ、どうしてやろうかなぁ。
『あたしが味方につくか敵につくか。…そういうこと』
ぴくり。
反応した。
あたしの冷たい口調に反応したか、それとも…
『あたし、諦めの悪い子ってさ』
冷たく笑う。
どれだけ冷たく笑ってきたんだろう。
それでも慣れないなんて、また笑っちゃうんだけど。
『嫌いだ』
とどめが刺さったのだろう。
わかりやすい程に反応し、ビクビクしだす、王様。
あーあ。
これで満足か、怪盗さん?
ありったけの時間稼いでやったよ。兵士も護衛も全部集めてさ。
「子」、なんて言ってきたけど、立派に大人の王様だ。
弱みに付け込まれるって、酷くちっちゃく見えるもんだね。
だからあたし、子供扱いしちゃったぁ。
なーんて言ったら、怒るかな。怒るよね。
そんな風にしてまた馬鹿にしたいのは山々だけど、今は封印。
ただでさえ危ういあたしの立場、悪くなりすぎちゃうからね。
未だビクついてる王様に、確認のとどめ。
『協力しますか?』
「は、はい…」
情けないその子は、やっぱりYesって言ってくれた。