ダーク・ファンタジー小説

Re: ● 凛花と恐怖のゲーム。〜人生ノ崩壊!〜 ● ( No.194 )
日時: 2015/04/01 11:03
名前: みーこ ◆jdHxHHqZ4A (ID: wJ5a6rJS)

風を切り、空をかける。

温かい風が、ゴウゴウと、音を立てながら体の横を通り過ぎていく。

凛花は、颯斗の上を這って耳元まで近付いた。

「颯斗、もう帰れるんだよね?」

しかし、風で声が掻き消されたのか、颯斗は何も答えず、空を駆けてゆく。

もう一度、次は、もっと大きな声で。

「もう、帰れるんだよね!?」

しかし、また沈黙が続く。

やはり、聞こえていないのだろうか……

もう少し、風が穏やかになってから質問をしたほうがいいかもしれない。

そう思い、もう1度、聞こうとした時、

「………わかんねぇよ」

風に紛れて、そんな声がしてきた。

わからない?

ならば、どうやって帰るの?

「テキトーにでも、走り続けとけばいいんだよ。」

そう言って、足を動かし続ける。

こんな奴に、命を預けて良いのだろうか。

命を捨てているようなものではないだろうか。

(もう、帰れないのかな……)

その時、雲の隙間から光が差し込んだ。

地獄には、もう何年も差し込むことはなかった光。

その、まばゆい閃光に目が暗む。

地獄の、暗い大地が白い光に照らされ、光り出す。

時間が止まっていた地獄が、一気にまた動き出したようだ。

光が当たらず、黒く変色していた木々も、緑色を取り戻し、

青々と茂る。

何もない、
岩だらけのゴツゴツした土地も、
草木が芽生え、あっという間に森林とかした。

地獄の鬼、骸骨達も、慌て出す。

何事だろう、と。

空を覆っていた黒い雲も、
光が差し込むにつれ、減っていき、青空が顔を覗かせた。

「あっ…………」

凛花も、颯斗も、ただ口を開け、その光景を見つめることしかできなかった。

地獄は、ほんの数分で、樹々が生い茂る森林になり、
鬼も消え、建物などは崩壊し、動物達が歩き回っている。

今まで、ネズミ、カラス、ヘビなどの動物しかいなかったが、
今は、鹿や小鳥などの生物が住んでいる。


「一体、何が起きたの………」

カクンと膝をつき、空を見上げていた凛花の目に、何かが見えた。


雲の隙間から、人間が飛び出した。


1人や、2人ではなく、何千人もの人間が。


その中には、ミミやユズリ、トウジや、セイの姿も。

「凛花〜〜!」

ミミが、凛花にギュッと抱きついた。

「凛花、さん。地獄は、滅びたんだよ。もう、終わったんだよ。」

何も、していないのに、地獄は滅びたの?

「凛花さんと、
颯斗さんの、負けないという強い意志があったから、地獄は滅びたんです。」

私に、強い意志が?

そんなもの、なかったよ?

「私には!そんな意志なんて、無かったよ!ミミ」

凛花は、叫んだ。

しかし、ミミは優しく笑い、凛花の手を取った。

「いいえ。意志は、
心の奥にあったのです。本人も、気がつかないような、奥に」

「ミミ………」

凛花は、ミミに抱きついた。

「ミミ、ミミ………」

凛花が、ミミ、と呼ぶたびに、ミミはコクコクと頷いた。

「あのー素敵なお話の途中ですが、どうやって地上に帰れば……」

颯斗が、ミミに問いかける。
すると、ビシッと親指立てて、

「大丈夫よ。ちゃんと、地上へ送るわ!」

ホッと颯斗は胸をなでおろした。
ミミは、ふふっと笑う。

「さぁ、2人の勇者!地上へ、帰るぞ!」

「なんか、RPGみたいになってる……」

ボソッと颯斗がツッコミを入れる。

「そこは、ね。サラーと流してあげて。」

「おk!」

ミミに、誘導され、歩いて行くと、何千羽もの白い鳥がいた。

「この子たちが、送ってくれるから。」

ミミの合図で、鳥は、サーと自分の配置につき、出来上がったのは馬車だった。

「カッコいい!」

凛花は、おおお〜と目を輝かせる。


中には、さまざまなところにきらりと光る目がある。
座る座席は、さすがに普通の椅子だった。
足元に、白い羽が散らばっている、

2人が、乗り込むと、馬車は………馬車ではなく、鳥車チョウシャは、動き出した。

「颯斗、動物愛護団体ナントカカントカに、訴えられないよね?」

「知らね〜」

ムゥと、頬を膨らませながら、後ろを振り返った。


ミミ達が、手を振っていた。
凛花も、感謝の気持ちを込めて、力一杯振る。

「颯斗も、振れって。」

「………はいはい。」

颯斗も、小さく手を振る。
ミミ達は、ブンブン手を振り、しばらくすると、光の中に消えていった。
それでも、凛花はジッと眺めていた。

この恩は、どうやって返せば良いのだろう。
何から、何までして貰った。

「…………ありがとう.」

颯斗が、ボソリと呟いた。

「颯斗………」

「なに?」

「んでもない。」

凛花は、ブンブンと首を振って前を向いた。
早く、帰ってみんなに会いたいな〜

そう、思いながらガタガタ揺れる馬車の中で、居眠りを始めた。

そして、寝ている間に、地上は迫っていた。