ダーク・ファンタジー小説
- Re: ● 凛花と恐怖のゲーム。〜人生ノ崩壊!〜 ● ( No.216 )
- 日時: 2015/04/30 18:37
- 名前: みーこ ◆jdHxHHqZ4A (ID: wJ5a6rJS)
船に潜入した俺は、ほんの1秒で目を奪われてしまった。
口を、あんぐり開けて辺りを見渡す。
カラフルなライトを身にまとった機械類は、紅を照らしている。
電子音が、あちこちから鳴り響く。
床は、パネルになっており踏むたびに色が変化した。
「すげぇ。」
恐怖や、緊張はあっという間に解けていった。
紅は、もっと中を見たいと思い、先へ進んだ。
これが、奴らの手口でもあった。
まるで、食虫植物だ。
鮮やかな色、美味しそうな蜜、甘い匂いで虫を誘い、最後には食べてしまう。
もう、後戻りできないのだ。
振り返っても、元来た道は閉ざされてしまっている。
今、襲われれば逃げ場はない。
籠の中の鳥のようだ。
紅は、先へ進んだ。
そこは、厳重なセキュリティーのある実験室。
紅の進んできたルートは、レンと全く同じだった。
そう、この道をそのまま進めばレンと同じ運命を辿る事に_______
紅が、扉の前に立つと自動的に扉が開いた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ………
カラフルな世界は、一変し単色の世界。
見渡しても、真っ白。
その空間の真ん中に、'"何か,,がある。
紅は、そのまま進んだ。
後戻りができないならば、先へ進まなければならない、そう思ったから。
薄暗かった通路で慣れた目は、この空間では辛かった。
「っ…………」
手で、目の前を覆い視線を前方へ動かした。
「なんだ、あれ。」
さっき見た、"何か,,のようだ。
小走りになり実験台に近寄った。
コポコポ……と、沸騰を続けるビーカーの中で
小さな生物が苦しそうにもがいている。
その隣では、薬草が煮えている。
薄紫のガスが上がり、全体的に蒸し暑い。
汗が吹き出し、額から垂れた雫は床に落ちた。
そして、蒸発していく。
「あぅ」
一体、この部屋は何度なんだ?
まるで、温室。
紅は、部屋の片隅に置いてあった温度計を手にした。
しかし、当てにならなかった。
50度までしかない温度計は、MAXを示しそれ以上あるようだ。
垂れてきた汗をコートの袖で拭う。
次に、コートを脱ぎ腰に巻きつける。
それでも、暑い。
帽子もとったが、置き場がない。
仕方なく、床に置いて歩き出した。
後で、取りに帰ればいいんだ。
「ハァハァ」
水が欲しい_______
というより、早くこの部屋を抜けなければ。
小走りになり、出口へ駆けた。
シュゥー
また、一粒の汗が蒸発していった。
「早く、この檻から出たい。」
硬い床に寝転がったレンは、魂が抜けた様になっている。
パクパク、動かす口の周りには赤い液体が付いていた。
あの、赤いスープだ。
あそこまで、嫌がったレンだが命の危険を感じた今食べずにはいられなかった。
食べなければ、命は無かった。
まぁ、何かを口にすればしばらくの間は生きていけるだろう。
けれども、いつかは"餓死"してしまう。
・・・児童虐待を受け、
食事を与えられずに死んでいった子供達は
どんな気持ちだったのだろう。
何かを、食べたかっただろう。
食べ物に、手を伸ばしても届かない。
目の前で、親達は普通に食事を取っている。
欲しい、その一言を発しても何も目の前には来ない。
口の中は乾き、次第に痩せこけ衰弱していく。
外に出る事も許されない。
虐待が始まったばかりのころ、ご飯を与えられなくなった子供達は、遊びに行った家の冷蔵庫の中をあさっていた………
誰にも、助けを求める事はできず孤独にこの世を去ってしまう。
発見された子供の体は、痩せこけている。
骨に、皮が付いただけの手足。
服の隙間から覗く体は、肋骨が浮き上がっていた。
頬も、肉がなくなる。
今は、その子供達の気持ちがよく分かる気がした。
レンの体も、少し肉が落ちていた。
衛生の悪い環境のため、体の周りにハエが集っていた。
追い払っても、追い払ってもやってくる。
「ヴヴヴ」
レンは、目の前の木製のスプーンを手に取った。
床に広がったスープをすくい上げる。
あの時、
まだそこまで苦しんでいなかったから、このスープを捨てる事ができた。
しかし、今は_______
スープが、口に流れ込んでくる。
冷たい。
けれども、"""美味い""""。
レンの舌はおかしくなったのだろうか。
いつの間にか、久しぶりに満腹感を感じていた。
叩くと、硬い。
興奮していた。
その時、また夕食がレンの元に届けられた。
体を起こし、夕食へ近寄る。
何か、生臭いが…………!?
目の前には、異臭を放つ食材とはとても言えない物が並べられた。
運んできた人物は、レンの食べ終えた食器を持って出て行った。
今思えば、あの人物が扉を開けた瞬間に逃げる事はできたんだ。
けれども、そんな体力何処にもない。あるわけない。
レンは、夕食を覗いた。
魚の缶の中に、生ゴミとしか言いようのない腐った魚が詰め込まれ、
その隣には、骨が積まれた皿。
その2種類。
ならば、前のスープのほうがマシだった。
そこへ、誰かが近寄ってきた。
「こんにちは。100番、今日の献立は、調理場で探してきたんだよ。
もう、お前に出すものはない。しかし、あのスープを飲み干すとは。
おかげで、なんでも食べれるとわかった。」
馬鹿にしてやがる。
「俺の、武器を返せ!」
レンは、叫んだ。
レンの弓は、奪われてしまっていた。
「返すわけない。まぁ、せいぜい頑張るのよ。」
ニタニタ笑いながら、割烹着を着た仮面の女は去っていった。
「嘘だろ………」
レンは、絶望で倒れ込んでしまった。