ダーク・ファンタジー小説

Re: ● 凛花と恐怖のゲーム。〜人生ノ崩壊!〜 ● ( No.254 )
日時: 2015/06/12 18:34
名前: みーこ ◆jdHxHHqZ4A (ID: pmOIN4oE)

颯斗のお陰?もあってか、地上に着くまで吐くことはなかった。

一方の颯斗は、貰い吐きをしてしまう……

「お前……のせいで、俺が……」

顔を真っ青にして、振り返る。え??何々?

「お前の、吐き気が、うっ……つった」

吐き気が、移りましたか……そうですか。それは、それは大変ですな。

吐き気の原因の人間は、無事地上で終わらせ晴れ晴れとしている。

「クソヤロ……呪ってやる、頭噛み砕いてやる」

ガルルル……と、獣化して牙を見せつける。しかし、怖くない。子供の狼なんて怖いわけがない。

凛花は、「がんばれー」と手を振りながら、近くの岩に腰掛けた。

岩の前には、死体がドサリと置かれている。まだ、赤黒い血は流れ続けていた。

それでも、紅は生きていない。死んでいる。

見るのも、辛くなるような死体を凛花は、何のためらいもなく触れた。

冷たい。

魂は、すでに体から離れてしまっていた。

剥がれた皮膚を、指で直し体に貼り付けていく。肉が見えなくなると、少しは気持ち悪さが消えるような気がした。

しかし、千切れた胴体から覗く内臓は隠すことが出来なかった。

薄いオレンジ色の内臓は、グチュリと飛び出ている。

ブニブニした内臓は、怖いし気持ち悪い。

凛花は、そこへ紅のボロボロの上着を乗せた。内臓を、見せたままの状態も良くない気がしたからだ。

そして、遺体の前で静かに掌を合わせ目を閉じた。

口元を拭いた颯斗は、すっかりピンピンしている。顔色も、良くなり赤みが頬にさしていた。

立ち上がり、凛花の隣へしゃがみこむ。そして、同じように掌を合わせ目を閉じた。

隣から、小さく呟く声が聞こえる。なんだろう、と颯斗はその声に耳を傾けた。

「今まで、ありがとう。助けてくれて、ありがとう。助けられなくて、ごめんなさい……」

凛花は、紅に感謝と謝罪の気持ちを伝えていた。

紅は、故郷に帰れなかったんだ。しかし、故郷は一体………

カサッ

そんな、音がして颯斗は足元を見た。スニーカーの前に、丸い何かが落ちている。

「ん?」

拾い上げてみると、それは紅の帽子だった。愛用の、迷彩柄の帽子。

紅の、か。

肌身離さず、大切にしていた。どうやら、風で転がってきたようだ。

帽子に付いた埃や、砂を颯斗は手でパッパッと払い落とし、頭に乗せた。

獣化したままの耳が、帽子の隙間からはみ出す。

なんだか、紅が近くで見守ってくれている気がする。

あっ、と颯斗は呟き帽子を取ると凛花の頭に帽子を乗せた。

「なっ!何、乗せた!?」

いきなり頭に何かを乗せられ、イタズラでもされたかと思った。

しかし、頭の上のものを触り、フゥと溜息をつく。

紅の帽子が頭に乗っていた。

なんだ、紅の帽子か。

「………ありがと」

凛花は、颯斗の頭を肘でコツンと小突く。

「ああ」

颯斗もまた、凛花の頭を小突いた。