ダーク・ファンタジー小説

Re: ● 凛花と恐怖のゲーム。〜人生ノ崩壊!〜 ● ( No.275 )
日時: 2015/07/11 17:01
名前: みーこ ◆jdHxHHqZ4A (ID: wIulFSp9)

空に煙が上っていく。4人の目の前には炎に包まれた紅が横たわっていた。パチパチ、と火の粉が飛ばしながら紅は白い灰になっていった。
翠は天に昇る灰に手を伸ばし、掴む。

「紅!置いてくなよ!お前は、やりたいことを全部やってないだろ!」
しかしその叫び声は、届かない。紅はもう違う世界へ行ってしまったから。


____紅は、『今の自分』に満足していますか?_____


炎は灰も、飲み込みながら大きくなっていく。ゴォゴォ、と燃える炎に紅が映し出されたような気がした。
翠は、ハッと炎をもう一度見たが、ただの赤い炎に戻っていた。

「紅・・・俺は大きな、とても大切な失くしものをしたよ」
膝を抱え、顔をうずめる。紅の偉大さを翠は実感した。
碧をなくした時と同じ絶望に襲われた。

「今さ、紅。碧と一緒にいるんだよな?碧は元気?」
顔をうずめたまま、翠は話し続ける。(無口すぎなんだよ)死体に怒りをぶつけてしまう。

また、翠の目から光に反射する滴が溢れ、目を閉じ抑えようとしたときまた滴は地面に落下した。

颯斗は岩の上から、何かを話している。茂みからいつの間に…

「翠泣きすぎだろ。地面に水たまり出来てるし」

全く気持ちを理解してくれないんだ。”人間”じゃねぇもんな。
狼、何だよな。いくら人間の姿をしていても中身は狼だ。
狼は、どうせ群れの仲間が1頭死んだって、気にしないだろ?

その言葉は知らないうちに、口から漏れ出していた。

「___さっきから、黙って話聞いてりゃなんだよ。狼で悪かったな。狼だって、仲間が死んで悲しむに決まってるだろ!森の王者が、涙見せられるか!」

颯斗は獣化して翠にとびかかっていった。翠の首を噛み、怒りを表す。翠は刀を抜き、颯斗に話しかける。

「いくら仲間でも俺を襲うなら斬るけど」
「襲う。悪口言われて黙ってられないんで」

その瞬間、翠は颯斗を押しのけ立ち上がった。
颯斗は宙で回転して地面に着地する。

翠は刀を構え、颯斗を睨みつけた。颯斗もまた、牙をむき少しずつ翠との距離を詰めていく。

「そっちから、来るのか」

翠は驚いたように話す。が、余裕が感じられる。

(狼の狩りの成功率は約10%だ。そこまで高くない。むしろ、低い)

狼という生物は、基本的に何でも狩る。鼻を噛めば、麻痺する為狙いたいが・・・人間では解らない。

頸部を噛みついても、有効(羊などの大型動物)だが人間では試したことは無い。

というより、人を食う経験など人間界で生きていれば99・9%いや、100%ありえない。

颯斗が考えている間に翠は飛び出していた。慌てて後ろへジャンプする。翠は刀を振るが空振りに終わる。が、まだ終わっていない。

斬撃が颯斗に飛んでくる。

「空振りは、フェイクかよ」
翠は頷く。狼の最高時速は70㎞/h。人間であれば、20㎞/h。思いっきり走ってである。そのため、翠が追いかけてきても到底追いつけないわけだ。

ダダダダダダダ!と地をかけ、颯斗は走り翠の背後に回り、首筋に牙を刺す。翠は「くっ!」と首を抑え、しゃがみ、刀を振る。

「チッ。噛みやがったな」

噛まれた場所は、頚動脈。意識を飛ばして殺す気か!まぁ、そこまで深くない。頚動脈には達していないはずだ。

翠がもう一度、攻撃を仕掛けようとしたとき、首を何者かに掴まれていた。

「そこまで。バカじゃないの?なに、殺し合いしてるわけ?敵を殺しに来たわけであって、仲間を殺しに来たわけじゃない。能力を無駄遣いするな」

白いパーカーの少女、凛花だ。

「千里眼で、見させていただきました。くだらない」
「けどっ・・・!」
「颯斗、そのキレ症直した方が良い」
凛花に反論しようとしたが、次は緑に話しかけていた。

「襲い掛かって来たからって、刀を抜くのはどうかと思うよ?仲間でしょ?ねぇ、強いんだったら仲間殺してないで敵を殺してきて」
凛花に言われ、反論したくても殺し合いをしていた人間が反論できるわけなかった。