ダーク・ファンタジー小説

Re: ●凛花と恐怖のゲーム。〜人生ノ崩壊!〜 ●『キャラ選挙』 ( No.290 )
日時: 2015/07/24 11:21
名前: みーこ ◆jdHxHHqZ4A (ID: pmOIN4oE)


トウジは口をあんぐりと開けて、瓶を持った右手を震わせた。
「俺は………」
床に手をつき、トウジは目を見開き目の前の現実を信じようと必死だったが、無理だった。レオウの最期の言葉が耳に残る。一生消えないと思われるあの声。
「偽善者」の言葉が頭の中にピッタリと張り付き、剥がれようとしない。

「うわぁぁぁぁぁ」
突然、トウジの中の何かが崩壊し、床に頭をぶつけ始めた。ドン、ドン、ドンと音を立てながら床に頭をぶつける。トウジを止められるものは居なかった。
翠が止めようとしたが、すぐに跳ね返され近づくことが出来なかった。
叫んでも、トウジには聞えない。
信じていたのに、裏切られた事でトウジの中に眠る『魔物』の封印が解かれたようだ。

翠は顔を顰めながら、「メンドくせ」と呟き、トウジをまた蹴った。
「いい加減、目、覚ませ。お前ウザいんだよ。そういう態度取られると迷惑」
と吐き捨てる。それでもトウジは頭を床にぶつけ続けた。

カァッ、と頭に血が上り翠は刀を抜く。
「トウジ!こんな事、しないと目、サマさねぇのか?」
銀色に光る刀はドサリ、と床に何かを叩き落とした。
その衝撃にトウジは顔を上げ、翠を見つめる。
そして上下上下と目線を移動させ、放心状態のまま床に倒れこんだ。

床に叩き落されたのは、人間の手首だった。
断面からは、トマトジュースのような生臭い液体が流れてくる。
翠は床にしゃがみ、手首を回収した。
しかし、それを回収する翠の腕にはシッカリと手首は付いていた。

つまり、偽物である。
翠は偽物の腕を切ったため、躊躇いもせず出来たのだ。
それを知らないトウジは床にバッタリと倒れてしまった。
この腕の正体は、レオウの腕だ。
知らぬ間に翠は腕を切り落としていたのだ。
本人も気がつかないうちに。

そして腕を床に放り投げると、トウジに近づき頭に刀の鞘をコツン、とぶつけた。
「さっさとこの部屋のメズラシィ物奪って出るぞ」
そう言って翠は部屋をグルッと見渡し、枕カバーにイロイロな物を詰め込んで部屋を出て行った。

ヨロヨロ、とトウジも起き上がり翠の後を追っていく。
もちろん、トウジは何も奪わない。
トウジが奪いたい物は、実際のは手に入れる事はできないが、

「俺が欲しいのは、_________________」


トウジは翠を追いかける。そして、
「俺が欲しいのは、レオウみたいに沢山の家族なんだ」