ダーク・ファンタジー小説

Re: 君の涙に小さな愛を。 ( No.4 )
日時: 2015/06/20 11:46
名前: 榛夛 ◆OCYCrZW7pg (ID: Uj9lR0Ik)




 Present02「また明日ね、は……きっと嘘」




「爆ぜろ、リア充……!!」


 隣で聞き覚えのあるフレーズが聞こえた。声の主はどうやら私の友達の木崎比呂(キザキ ヒロ)らしい。すぐ傍にいるカップルをじとぉーっとした目でにらみつけながら、深いため息をついている。


「比呂さ、何か不憫に見えるから……いや、中二に見えるからそれやめようか」

 
 後ろからさっと現れたのは、駒沢萌乃(コマザワ モエノ)
学校の中で特に可愛いと言われ有名な女の子だ。この子と比呂が中学の時からの友達らしい。私と比呂が席が近いという理由で仲良くなった。そんなときに彼女を紹介してもらった。
 容姿端麗、頭脳明晰。非の打ち所がない子だ。
 実質、私はいつも羨ましいと思っている、そう思うのとついでに萌乃と友達ということを自慢に思っている。


「っていうかさ、さっき一緒にいた男の人だれ!?」

 比呂が急に口を開いた。
 
 さっき一緒にいた人?それはもしかしたら堀先輩のことだろうか?
なんとなく感づいてはいたけど、言うのが少し嫌だったから「なに」とはぐらかした。
 比呂はそんな私に気づいたのか、

「わかってるくせにー」

 と、にたりと笑って見せた。
 私たちは今、大きなショッピングセンターにいる。辺りはいまどきの少年少女から、つえを持ったおじいさんや、若いカップル。老若男女、人それぞれだ。
 こんな場所に一緒に来たということは、彼氏ではないのか?ということなのだろう。


「堀先輩のことでしょ。でも、彼氏とかじゃないよ」

 私はそう言って、少し大きく足を進めた。
下にあるタイルを見ながら、きれいな色だなぁと感動していた。
 まぎれもなく、それは私にとっての日常だったから。
そんなことさえ、感動できる自分が何だか誇らしくなった。

「え。じゃぁ、誰なの?」


 今度は、萌乃が口を出してきた。正直、萌乃も気にしていたなんて思ってもいなかったから。
 私は話すことをためらいながらも、簡単に彼のことを話した。

「中学の時の先輩」


 大事な部分を大きく端折ってしまったが、言ってしまうとこの関係が壊れてしまう気がした。
 おはよう、そう明るく話しかけてくれる彼女たちは、私にとって宝物なのだ。新しく手に入れることができた、私の大事な大事な宝物。
 中学の時も友達がいたが、その子たちとは違うほうに進学したため、もう会うことは少ない。だから、大切にしないと。
 

「へぇ、中学の先輩かぁ。で?何でそんな人となずなが一緒にいたの。そんなに仲いい先輩だったの、部活の先輩とか」
「そうじゃないよ。それに、私は部活に入っていなかったから。でも、お世話になった先輩なの。今日会ったのは偶然、本当に偶然なの」


 私の太い声に、二人は多少驚きながらもうなづいてくれた。
嘘だと、分かったのかな。いや、これは嘘ではない。
二人に話したくないことだけ、端折ったんだ。


「偶然……、偶然」


 二人の優しい言葉が私の嘘を本当にしてくれた。
この二人に出会えたのは、きっと奇跡だろう。
 そうなのであれば、神様に感謝しないと。
あの時は恨み続けた神様に。