ダーク・ファンタジー小説
- Re: 君の涙に小さな愛を。【参照100感謝】 ( No.6 )
- 日時: 2015/02/13 23:09
- 名前: 榛夛 ◆OCYCrZW7pg (ID: jGEzFx76)
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チョコバナナの甘さに少しだけうんざりしていると、隣にいた比呂が
「そういやなずなって甘いの嫌いじゃなかったっけ?」
と尋ねてきた。言ったことでもあるのだろうか。
私は小さく頷きながら「まぁね」と笑って見せた。
そんなに言うまで甘いものは嫌いじゃないし、女子だから甘いの食べられないと少し引かれてしまう。そして最終的に聞かれるのは「ダイエット中?」だからね。女子というモノは本当怖い。
「そうなんだ、なずなって甘いの駄目なんだね。ごめんね、私がクレープ食べたいって言ったばかりに……」
萌乃が本当に申し訳なさそうに謝ってきた。私は大丈夫だよ、と笑っていせるが、結構つらい。チョコが口の中で広がっていって、正直今にも吐き出してしまいそうだ。けど顔には出さない。
出してしまったら友情が簡単に壊れてしまう気がしたから……。
「あのさ、なーずな」
比呂が突然私に抱きついてきた。私はまだ残っているチョコバナナパフェを落とさないようにぎゅっと握りしめ、彼女のアタックに耐える。
比呂は満面の笑みだ。どうしたのだろうか?
「さっきの本屋の男の人さ。あのひとは?あの人は彼氏さん?」
女子高校生というモノはどうしてこんなにも恋バナが好きなのだろうか。疑問に思いつつも、私は無理矢理口元に力を入れて目を細めた。
本屋の男の人……。あぁ、坂本さんのことか。
「私ね、二つ上にお兄ちゃんがいるんだけど」
「あぁ、進学校に通ってるっていう高3の?」
「うん」
萌乃が聞いてきたので、私は相槌を打つように返事をした。
「そのお兄ちゃんのお友達」
「えー。もしかしてあの人も進学校に通ってる人?」
「あぁ、うん。頭いいんだよ。中学の時勉強教えてもらったの」
坂本さんの話をするなり、比呂と萌乃の顔は見る見るうちに変わっていく。
悪いことを考えているような……まるで別人だ。
「へぇ、彼氏さんじゃないの?」
「……はぁ!?そんなわけ、な、ないじゃんっ」
いや、言われることは予想通りだった。でも、いざ言われてみると恥ずかしい。なぜなら彼は私のあこがれの人だったから。
彼が私の初恋、そういっても過言ではないくらいに。それくらい私は坂本さんに好意を抱いていた。
でも彼に会えなくなる時、私にショックな気持ちは現れなかった。その時にようやく気付いた。
あぁ、私この人のこと……本当に好きじゃなかったんだと。
そんなこんなで私は坂本さんと話す機会がなくなり、会うこともなくなった。
こんなところで再開するなんて一ミリも思っていなかったし……。
「じゃあ、今度紹介してよ」
「……えっ!?」
比呂がにやりと笑う。
私が戸惑ったように目を逸らすと、比呂は分かったように「嘘だよ」と言葉を付け加えた。
「本当になずなは正直だね」
本当は私は坂本さんのことが好きでもないのに。
比呂に正直者と言われ、嘘つきな私の心が少しだけ痛んだ。