ダーク・ファンタジー小説
- Re: 君の涙に小さな愛を。【参照300感謝】 ( No.14 )
- 日時: 2015/03/16 23:05
- 名前: 榛夛 ◆OCYCrZW7pg (ID: 9u1Zwsgn)
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あぁ、疲れる。
クラスのみんなが自己紹介を始めるのを鬱陶しいと感じながら、私は腕を机にたてボーっとしていた。男子の順番が終わり、女子の順番が始まる。私の前の席の人がにこやかに自己紹介を始めた。彼女が紹介し終わり、席に着く。「じゃぁ、次遠藤さんね」と先生が私を見てそう言った。溜息交じりに息をつき、私は席を立った。
私はテンプレートを読むように、自己紹介を始めた。
「初めまして、遠藤なずなです。好きなことは絵を描くこと、嫌いな食べ物は甘いもの全般です。絵をかくのが好きなので、美術部にはいろうと考えています。皆さん、仲良くしてください」
上手く笑ってみせると、教室から拍手が沸き起こった。周りを見渡すといつものメンツが「よろしくー」と、言っている。
教室の窓が少しあいていて、そこから隙間風が吹く。風に少しだけ髪が靡く。もうすぐ髪を切ろう、そんなことを考えていた。
***
自己紹介の終わったすぐの休み時間。みんなはギャーギャーと楽しそうにはしゃいでいる。確かに私たちはつい最近まで小学生だったから、子供という枠がなかなか外れないのは仕方ないだろう。それでも、もう中学生になるんだ。休み時間ごとに煩くするのはやめてほしい……。はしゃぎまわる男子生徒に、持ってきてはいけない携帯電話を見せびらかす女子生徒。
私は席から一歩も動かなかった。後ろの席である親友の詩織がトイレに行っていたため、私はすごく暇だった。暇だったため机からスケッチブックを取り出し、筆箱から鉛筆と消しゴムを取り出した。
ゆっくりと私は自分の目に焼き付いた光景を絵にしていった。大きな黒板、校訓の書かれた看板、綺麗にシートでカバーされているテレビ。
描いていくたびに、新生活に胸が躍った。
「おぉ、絵描いてるじゃん」
「あ、お帰り—。詩織」
帰ってきた詩織が小さく微笑みながら私の書いている絵に目を落としつつ、自分の席に座った。
栞が来たからという理由で私は鉛筆を置き、スケッチブックを閉じた。
「……別に描くのやめなくてもいのに」
そう言いながら詩織はちらりと時計を見上げた。それにつられて私も時計を見る。時間は、もうあと一分ほどで休み時間終了の時間。
「描くのは家でもできるから」
「そう?」
ちょうどその時チャイムが鳴った。それと同じく、担任の先生が入ってくる。小学校の時と大きく違うのは、教師が入ってくる時間帯だ。小学校の時は教師は平然と十分遅れとかをかましてきた。そんなときはみんなでおしゃべり大会。そういうのもなくなるかと思うと、少し寂しいな。
教師は出席を確認した後、教科書などを配り始めた。それに名前を書いているとあっさりと一時間という時間は過ぎていった。
四月は出会いの季節。
君との出会いの季節が、やってくる…………。