ダーク・ファンタジー小説
- Re: 君の涙に小さな愛を。【参照400感謝】 ( No.18 )
- 日時: 2015/04/04 01:20
- 名前: 榛夛 ◆OCYCrZW7pg (ID: Uj9lR0Ik)
*
はっきり言おう。
これから初めての中間があることを、私は忘れていなかった。それでも、どちらかというと今はコンクールのほうに集中したかったのだ。
きっと、そこそこの成績をとれば母親は怒らない。そう考えた。
授業を聞きながらも、デッサンを続け一応授業はきちんと聞いていたもののそこまでテスト勉強に精を出さなかった。
「……勉強の調子はどう?」
お母さんが部屋に入ってくると、私はすぐにスケッチブックを隠しシャーペンを手に持った。ぎこちなくなるのをごまかすために、お母さんのほうに振り返って言う。どうしたの、と。
あったかいスープを持ってきたお母さんは
「ちゃんと睡眠はとるのよ」
と笑って、優しく声をかけてきた。私は笑顔で頷いて、ありがとうと言い返す。言えない、言えない。お母さんはきっと私がいい点を取ってくるのを期待しているはずだ、勉強をしていないなんて言えない。
お母さんが持ってきてくれたスープを一口。温かいものが心の中に流れ込んできた。美味しい……。
息抜きも大切だよね。
私は立ち上がり、カーテンを開け窓の外の景色を見た。星がたくさん輝いている。明日は晴れるかな、そんなことを考えていた。
***
テストの日、少しだけ焦ってしまった。
分かるようだが分からない。前みたいにすらすら解けなくて、私の心が悲鳴を上げた。どうしよう、これは……。
当然のことながら、私は前より点数を落としてしまった。
「どうだった?」
「え」
詩織に手ごたえを聞かれて、私は普通に口ごもってしまった。
詩織の笑顔からすると、多分できたのだろう。私はできなかったというのが恥ずかしくて黙り込んでしまった。
「テスト返すわよ」
一週間後、先生の声に私はゆっくり顔をあげた。
ドクンドクンと心臓が脈打つ。どうしよう、悪い点数をお母さんに伝えられない。
「……うわぁ」
案の定、点数はひどいものだった。
目標点数に全然届いていない。特に英語が壊滅的にぼろぼろだ。最初のうちは簡単だからね、と言われていたのに。できた教科もあったが、やっぱり英語の点数が響いているのだろうか。
溜息をつきながら、私は家に帰った。
お母さんは点数を見るなり、私をにらみつけた。
「どうしたの、この点数?」
「……え。あぁ、ごめんなさい。ちょっと」
「ちょっとじゃないでしょ……これなに?」
お母さんの声のトーンが低い。怒っていることが直に伝わる。
ゆっくりとお母さんが出してきたものを見て、私は声が出せなかった。
ぐちゃぐちゃになった「絵」
私が昨日描き終えた、コンクールに出す絵。悲惨な状態になってしまった絵。どうしてお母さんが持っているのだろう。そして、どうしてこんなぐちゃぐちゃになってしまっているのだろう。
「こんなの描いているから、点数が落ちるのよ」
ふと近くにあったゴミ箱を目に落とすと、そこには私の絵の具が捨てられていた。
「なんで……どうして、こんなことっ」
言い返そうとした瞬間、勢いよく顔をはたかれた。
ひりひりとする頬を手で押さえてお母さんの方を見ると、
「あんた、誰に向かってそんなこと言っているの?」
こんな人知らない。そう思った。
少し点数が落ちただけじゃないか。苦手な教科一つくらい、許してくれればいいじゃないか。そりゃ、コンクールの絵ばっかに集中していた私も悪いよ?それでも、たたかなくたっていいじゃない。
「________お母さん?」
そして彼女は言うのだ、
こんな子、産まなきゃよかったって。