ダーク・ファンタジー小説
- Re: 君の涙に小さな愛を。【参照500感謝】 ( No.20 )
- 日時: 2015/05/17 21:27
- 名前: 榛夛 ◆OCYCrZW7pg (ID: OgnYhGeD)
Present04「君と私の物語」
「もうすぐ夏ですよね」
「そうだね、暑くなって来たもんね」
「っていうか、何で堀先輩が家にいるんでしょうねー」
私はわざと迷惑そうに目の前にいる堀先輩に聞こえるような声でその言葉を言った。チラリと彼の方を見てみると、私にじとーっとした視線を送っているようだ。
「お前が来いって言ったんだろう?」
「えー、そんなこと言ってませんよ」
わざとその言葉を言ったつもりなのに、気に食わなかったのか堀先輩は私の頬をつねるなり「アホか」と私を小ばかにして暴言を吐いた。
「い、いひゃい……ひゃめてくでゃさい……」
上手く言葉を話せないが、私は精一杯抗議。
で、最終的に私が悪かったですと謝る羽目になる。こんなバカなこと言わなきゃよかった、後悔して私は深いため息をついた。
堀先輩と最後に会ったのは、あの友達と行ったショッピングセンターの帰り。あの時のお願いの一部である、今日家に来てほしいという言葉を鵜呑みにしてわざわざ遠いこの地に来てくれた。感謝だ。
もうすぐ夏休みにかかる、あれから一か月後。
七月中旬で、期末考査で涙を流した私はダラーと毎日を過ごしていた。
「で、お前のお願いをかなえてあげたいのもあれだが……」
「あれ、無理難題でした?」
「あー、超無理難題だ。ていうか、男相手にあんなこと普通に言うなよ、誤解されるから」
「誤解ー?堀先輩は誤解しないんですか?」
「え……」
少し顔を赤らめた堀先輩に、私は和やかな気分になる。
「私は誤解されても構いませんけど」
「……え?」
堀先輩は何かしらを妄想していたのか、ぱくぱくと口を動かせる。
いや、何を考えているかは私でも全く予想できないけれども……。
「健全な高校生男児をイジメてはいけませんっ!」
いや、イジメたつもりはないんだけどな。
堀先輩はしゅたっと、まるで擬音が聞こえるかのような勢いで立ち上がり、近くにあったクッションを私に向け構えた。
そんな光景に私はついぷっと吹き出してしまった。
「で、これからどうする?」
「どうしようかなー?先輩は白いスーツ着ます?」
「着ませんっ!」
怒りをこらえて小声で堀先輩はそう言い返す。
ミーンミーンとセミの鳴き声がうるさい。暑かったが、そのうるささで話が聞こえにくいため私は窓を閉めた。そうすると、ムーンと熱い空気がこもる。
やっぱり、暑い。そう思い堀先輩の表情を窺うと、彼もどうやら暑そうだ。申し訳なかったので、本来は勿体なくてつけないエアコンをつけた。涼しい風が部屋を包む。
「あー、涼しい」
「やっぱり先輩、ずっと暑いって思ってたんですよね。それなら言ってくださいよ」
「えー、悪いだろ、そんなこと言うの。お前一人暮らしだろ、勿体ないじゃん。金にも困っているみたいだし」
「……あ」
金に困っているというのは正しい。
毎月父親から少しは仕送りがあるが、それだけでは生活できない。そのため、私は学校に申請してバイトをしている。
で、極力お金を無駄にしないように今頑張って節約をしている所存だ。
「堀先輩……」
「ん。なんだ?」
「やっぱり早めに彼女作った方がいいんじゃないんですか?」
私の言葉を聞くなり堀先輩はにっこりと満面の笑みを浮かべた。
「余計なお世話だ」
セミの鳴き声は、やっぱり窓越しでも聞こえる。