ダーク・ファンタジー小説
- Re: 君の涙に小さな愛を。【参照800感謝】 ( No.29 )
- 日時: 2015/05/19 23:26
- 名前: 榛夛 ◆OCYCrZW7pg (ID: tAwbt3.x)
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それから先輩は悩みに悩みぬいた結果「少しだけなら……」と、私の部屋に戻ることになった。そして夕飯の時間になったため、私が簡単に料理を作る。美味しそうに食べてくれる先輩を見ると、自然と口元が緩んだ。
そのあと泊まっていきますか?と聞いてみると、顔を真っ赤にして
「一人暮らしの女の子の部屋に入るのもあれなのに、泊まりませんかという誘いはアウトだぞ!?なずな、そんなこと普通に言っちゃだめだぞ!」
そんなことを言っていた。意味が分からなかったけれど、堀先輩はそそくさと家を出ていった。
堀先輩が家を出ると、なんだか名残惜しい気持ちになる。もう少し、いてほしかったな……ふとそんなことを考えては、かぶりをふる。
堀先輩にはただでさえこんなにも迷惑をかけているのに、これ以上彼の負担になるわけにはいかない。
「……寂しい、な」
やっぱり一人になると正直になってしまうのだ。
家に一人きりになると、寂しさが込み上げてくる。切ない、一人ぼっちの怖さ。慣れたはずなのに、やっぱり慣れない。
シーンとした部屋を見渡して、私は深いため息をついた。
例のゴキブリは堀先輩が駆除してくれて、まぁ何とかなった。
良かった……本当、よかった。
***
朝学校に行くと、一人の少女が花の水を変えていた。
ふわりと風になびいた栗色の髪、ほっそりとしたスタイルに笑顔が可愛らしい少女。そこには私の友人である萌乃の姿があった。
こんな朝早くから、どうして水を変えたりなんかしているのだろう。
「おはよう、萌乃」
「あ、なずなだぁ。おはよう、元気だね」
「……え。もちろん元気だよ?」
「昨日、期末考査の結果見てすっごい顔して帰ったじゃない。心配だったんだよ?」
期末考査……。その単語に私はぎくりとした。
出来れば聞きたくない単語だった、うん、聞きたくなかった。思い出せば、私の表情がズーンと暗くなる。
さて、あと一週間で学校が終わる。もちろん私たちの学校は普通に補習とか夏休み中にあったりするが、別に大した日数じゃない。そのため、夏休みというのはとにかく楽しみだ。友達は山や海、テーマパークに友達と一緒に遊びに行く、そんな人が多いらしい。かくゆう萌乃も両親と夏休み、海外旅行らしい。お金持ちは違うな、私は萌乃にじとーっとした視線を送ったが、萌乃は頭にハテナを出すだけ。
私みたいな家賃・生活費で精一杯の学生には「バイト漬け」という不幸な生活のスタートになるのだが……。
そんなことを考えながら、私は深いため息をついた。
「いいなぁ、海外旅行」
「そう、かな?」
萌乃はもう海外旅行に行き慣れて、そしてまるでもう飽きたかのような口調でそう言った。
羨ましがる私を見て、萌乃は完全に苦笑いだ。
私も夏休みはどこかに行きたいなぁ……そう思いながら、今度堀先輩に何処かに連れて行ってもらおう、とそんなことを考えていた。