ダーク・ファンタジー小説
- Re: 君の涙に小さな愛を。【参照900感謝】 ( No.33 )
- 日時: 2015/06/07 06:57
- 名前: 榛夛 ◆OCYCrZW7pg (ID: OgnYhGeD)
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宮下香。その名前で、実は男の人。
どちらかというと不真面目で、色々と適当。そして、私たちが一番お世話になった残念なカウンセラー。
「久しぶりだな、問題児」
宮下先生をにらみつけて、私は「けっ」っと唾を吐いた。
それを見て宮下先生は「……おい」と苦笑い。隣に居た堀先輩にすらも「露骨だなー」と言われてしまった。仕方がない、この人が私のことを問題児扱いしたのが悪いのだ。
「ご無沙汰してます、宮下先生」
「どうしたんだー、俺に何か用か?」
「いや、宮下先生にだけは会いに来たりはしません。すみません、これで失礼……」
「って、おい!相変わらず遠藤は冷たいなー」
宮下先生はまた苦笑いでコーヒーを一口すすった。そして顔をニヤケさせる。その表情にまたイラッとして、私は堀先輩の手の皮をつねる。堀先輩はものすごく痛かったのか、大きく顔をしかめた。そんなに強くやってないのに大げさだな。……私は意外とあっさりした性格(どS)なんだな、そう理解するのはまだまだ先のようだ。
「遠藤は、意外と女らしくなったみたいだな、表面だけは。表面だけは」
「なんで二回言ったんですか?」
「は?大事なことだからに決まってるだろ。お前の中身は相変わらずS要素が強くて疲れる」
「先生、しばかれたくなかったらそろそろお口チャックですよ?」
私がにーっと笑ってみせると、宮下先生は額に汗をかき、小さく笑った。隣でいる堀先輩すらも「そろそろやめとけ」と注意を促す。
宮下先生の言うように、確かに私にはSっ気があるのかもしれない。それは、堀先輩や宮下先生をいじることが大好き、ということから自覚している。でも、そろそろ直さないと社会では生きていけないんだよなー。そう考えて私は小さく咳払いして本題に戻す。
「こほん、で、先輩は何で宮下先生のとこ行こうなんて言ったんですか?」
私が質問すると、堀先輩は「そう言えばー」と思い出したように声をあげた。忘れていたのか……正直今日一番の驚きだったが、それを言うと先輩を馬鹿にしてしまうと思ったから(例えそうだとしても結局いつも通り)口には出さなかった。
堀先輩が急に言い出したものだから、普通に反論せずついてきたけど宮下先生に何のようだったのだろう?
「あれ、お前ら俺になんか用だったのか?」
「あー、まぁ、そんなとこ……かも」
宮下先生の質問に堀先輩は曖昧に言葉を返す。
会いに来ただけ、とかだったらどうしよう。と思ったけれどそうではないらしい。堀先輩が急に引き締まった顔をしたものだから、私はごくりとつばを飲み込んだ。
「……宮下、あのな」
堀先輩の口元を見ながら、私は宮下先生との出会いを手繰っていた。