ダーク・ファンタジー小説
- Re: 君の涙に小さな愛を。 ( No.39 )
- 日時: 2015/07/03 23:09
- 名前: 榛夛 ◆OCYCrZW7pg (ID: eqvLcwt4)
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「死ぬって、どういうことだよ」
声の主は堀先輩だった。
私は自分の言った言葉が他人に聞かれていたことが恥ずかしくて、堀先輩を直視できなかった。目を逸らすと、堀先輩は怒ったように私の腕を引っ張って私に目を合わさせようとする。でも、やっぱり堀先輩の目を見ることはできない。
「おい、なずな?」
「……やめてください、先輩に私の気持ちはわからないんですから」
思ってもないことが口から出て、私はカッと赤面した。
本当は生きる意味が分からなくなった。
どうして人間は生きなければならないんだろう、って、本気で考えた。
どうせ人間は「生まれて生きて死ぬだけ」の生物。その「生きて」の部分だけカットしても誰も文句なんか言わない。
毎日のように「死にたい」と思い、息もできなくなる。怖くて怖くて、毎日泣きじゃくって、子供だからどうしようもなくて。
助けを求めることすらできない、逃げることだって勇気がいる。
もう、何も考えたくない。
自分だけがつらいなんて思わないから、だから……せめてもう終らせて欲しいの。
「人間は簡単に死ぬことなんてできないんだよ。どれだけ苦しかろうと、辛かろうと、人間はそう簡単には死ねない」
堀先輩の言葉は何故か真実味があって、少し怖かった。
太陽の光に反射して堀先輩の顔がよく見えなかった。彼は今どんな表情をしているのだろう?
ぎゅっと手を握られて、私は戸惑った。堀先輩の手は力強くて、私の心の奥深くに深く深く突き刺さった。
今まで、ただ屋上でたまに話すような仲くらいだったのに、いきいなりどうしたのだろう。そんなことを考えながら、私は先輩の暖かな手に酔いしれていた。
でも、少しだけ私は勘づいてしまった。堀先輩の言葉から感じるのは、私と同じような気持ち。もしかしたら堀先輩は私の同類なのか?そう考えて私はかぶりを振った。そんなわけない、堀先輩みたいないい人が私みたいな残酷な経験をしているはずがない。
痣をさすりながら私は堀先輩の首筋にある傷痕を見つめた。
やっぱり、あの傷痕は…………
「苦しいなら、何でも俺に話せ。俺はお前のことちゃんと受け入れるから。だから、もう……一人で抱え込まなくてもいいんだぞ」
なぜか堀先輩の言葉を聞いた瞬間、目からぶわっと涙がこぼれ出た。この涙はいつもの怖いとか悲しいとかの涙じゃなくて、きっと「嬉しい」の涙なんだろう。
私は堀先輩にギュッと抱きつき、心のうちをすべて語った。
先輩は何も言うことなく、相槌を打って私の頭を撫でた。くすぐったくて、気持ちよくて。
でも涙は止まらなかった。この時初めて、私は堀先輩のことを尊敬し、敬愛するようになったのだ。
今でも覚えている、堀先輩の表情。笑った彼の表情は、いつも私の心を救ってくれた。