ダーク・ファンタジー小説
- Re: 君の涙に小さな愛を。 ( No.41 )
- 日時: 2015/08/03 08:54
- 名前: 榛夛 ◆OCYCrZW7pg (ID: 6k7YX5tj)
*
終業式。エアコンのかかった教室に、ぐったりとした生徒たち。
さっきまで校長の長ったらしい話を聞いていたのに、これから「通知表」という最悪なものがやってくるのだ。そりゃ、ぐったりしても仕方がない。
私は窓際の席だったため、運動場を見ながら小さき息をついた。
「はーい!通知表返すよー」
どうして先生というのは生徒が嫌がることをするとき笑顔なのだろう。テストを返す時もそうだが、通知表を返す時まで笑顔なんだな。
出席番号順に生徒の名前が呼ばれ、私は通知表を受け取った。
「ねぇ、なずな!どうだった?」
詩織がこちらにわざわざ足を運んで尋ねてきた。私は苦笑いで「まぁ、まぁかな」と答えるけれど、まぁそこまではよくない。今日お母さんにこれを見せると思うと心が痛い。
窓越しでもセミの鳴き声が聞こえる。鬱陶しくて、イライラして……私は通知表をすぐにファイルにしまって鞄に突っ込み教室を出た。
「ねぇ、なずな。名に苛立ってんの?」
「苛立ってなんかないよ。勝手に決めつけないで」
今日のお母さんはどうだろう。最近は機嫌が悪いことも多いし……確か先月もこの時期機嫌が悪かったような。
別にそんなに通知表の結果が悪かったわけではない。普通だ、多分これは普通なのであろう。でも一つだけついている「3」という数字に私の背筋は凍り付いた。
きっと、何か言われるのだろう。そして、そのあと……。考えれば考えるほど、頭が痛くなる。
今日はどれほど、痣が増えるかな。
***
「なんで、3なんかあるの?どうして、どうして?」
「ごめんなさい、苦手な教科だったから。テスト前もちゃんと勉強できなくて」
「それだからって、こんな成績とってきちゃって。本当、ダメな子ね」
「…………ご、ごめんなさい」
あぁ、やっぱり痛い。
焼き付くようにじりじりと肌に痛みを感じる。赤い傷跡。
シャワーを浴びながら私は涙を洗い流す。足にある傷跡が染みる。痛くて洗い流したはずの涙がまた溢れそうになる。
理不尽だと思った、たかが3で。普通の成績の証拠の3で、こんなに怒られるのだ。じゃあ、何をとればお母さんは起こらないでいてくれる?
お母さんは……笑ってくれる?
「……ひっく、ぁぁ、ひっく、ふえぇ」
もっと強くなりたい。もっと、もっと、強くなりたいよ。
流れる涙が止まらいのはいつものことだけど、久しぶりに声をあげて泣いた。
「堀、先輩」
苦しくて彼の名前を呼んだのは初めてだった。
こんなにも彼に会いたいと思っているなんて、不思議だ。堀先輩の温かい、優しい声を思い出して、私の胸がギュッと締め付けられた。