PR
ダーク・ファンタジー小説
- Re: ぼくらときみは休戦中[ぼくさい短編・作者の呟き] ( No.15 )
- 日時: 2015/02/26 23:16
- 名前: 利府(リフ) (ID: ktFX/uOB)
「おかえり」
深夜時間帯、俺の恋人はどんよりとした様子でドアを開け、
俺のいる書斎へと入ってきた。
いつもの包帯を巻いて、倒れこむようにカーペットに寝転がる。
そう、俺たちがある日出会った時には、もう彼女は無機質な白い包帯を首と頭、片目に
巻きつけていた。
だけど、そんな大層な怪我ではない。
いや、むしろそこ以外の部分が傷だらけで、まるで彼女は…
ふざけて遊んで帰ってきている子供のような風貌。
「ねぇ、聞いてよダァリン。悲しいのよ」
「どうしたんだ?」
「行きつけの医者が、包帯めくりやがった。
私、あの医者信用してたのにぃ。酷くないかなぁ」
「それ巻いてるほうが悪いんだろ!俺から見てもまぎらわしいんだよ…ったく」
「ダァリンには見せたじゃない。だいたいキャミソなんて
私服には使わないわよ、包帯の意味がないから」
彼女の愚痴は大抵長い。
しかもそれの大半が、人間関係、自分の包帯のこととか。
そしてその大体が自己中心的。
最初見たときから、そこが好きだった。
その最初は随分前だったけど。
「ねぇ、覚えてる?告白してくれた時の言葉」
「そんなのあったか……」
『■■■、■■がいないと何もできないんだよ!!』
胸がドクンと鳴る。
脳内を、思い出したくない記憶が酸素と一緒に巡る。
「あったでしょ。私はそれを聞いた、だからここに傷があるんじゃないの」
彼女の鎖骨のあたりには、大きく雑に縫われた傷跡。
これが記憶だと、彼女はいつも言い張る。
だから必要最低限の、
桃子としての記憶だけを『僕』に語る。
「ねぇ、ジャバウォッキーの成り損ない。
あたしはあの白鳥だと思う?」
彼女がそう言い張るなら、
俺はこう言い張る。
「ミコトはそこにいる。
だから君は、………」
ただいまと言わない自由な鳥
(もう天敵は死んだというのに)
本編のずっとずっとずっと先の話です。
PR