ダーク・ファンタジー小説
- Re: ぼくらときみは休戦中[短編・作者の呟き] ( No.25 )
- 日時: 2015/04/19 00:10
- 名前: 利府(リフ) (ID: ktFX/uOB)
タイトル・最初の投稿を変えたよ記念
さぁ行こうぜ霧森君&主人公第二弾(現在のうちの子最萌NLカップリング)!
外からは明るい光が射している。
今日は唯一の肉親と言える母親も不在で、呼べる友達もいない。
しかし携帯とかパソコンとかを開く気は無い、
目的はあるからだ。
私は一直線に広々としたキッチンへ向かっていく。
マグネットと張り紙の巣窟になっている冷蔵庫の取っ手を掴んで、ぐいと引っ張ると
冷気が私の頬に触れてきた。
むふふ、と笑いながら私が手に取ったのは一粒の氷。
小さいとは言い切れないそれを口に運んで、コロコロと舌で転がしていく。
冬でも夏でも、こういう行動は何度となくやってきた。
がりがりと噛むときの感覚がどうしても癖になり、自然と顔がほころぶのだ。
喉の一部がちくちくしていたり、腹が空っぽの時はすぐに一粒。
帰って手を洗ってからの一粒。
歯磨きをして寝室に入る、と見せかけて一粒。
至福である。非常に至福のひとときである。
カーペットに転がって今日何をするか考える。
がりがりと鳴る音の中でも意外と物事は考えられるもので、辛い事を忘れながら
これからの目的を縫い合わせていく。
あー、この氷食べ終わったら次にカップ麺を…
「貧血持ちの典型的な生活。体も動かしもせず、寝っ転がってそのままお昼寝か?」
「……」
そう、こいつは大体そういうのを狂わせてくるのだ。
私が一番気を許せるし、許せない相手は。
「主食、主菜、副菜、せめてそれを揃えろ。
じゃないと悪霊が寄る。
人の心の弱さに寄ってくるモノはどの世界でも悪の象徴だ。
だからこそ、俺はあの教室から離れられないんだ。
負の力があのクラスには」
「うっさぁぁぁぁぁい!!幽霊風情が健康を語るなぁ、結核=不治の病世代がぁ!!」
「それは俺が生まれる前の話だ、馬鹿か。さてはお前、成績が悪いのか?」
「うぐっ…」
思い切り痛い所を突かれた。
多分風貌的にもこいつは優等生だろうが、私は平凡中の平凡で名が通っている。
しかしイメージを変えるにも、努力をするなんて馬鹿と思われるのに間違いない。
いじめとただの孤立は近いけど交わらない。
だから親にも言えず、私はこんな中世半端な場所でずーっと眠っている。
こいつは多分、違うんだろうなぁ…
そう考えると、妙にイライラしてきた。
謙虚だけどずいずいと入り込んでくる男に。
「霧森。お前の頬をつねればいいのかね、私の気を晴らすためには」
「何を言っている?」
きー、っと頭が噴火するような感覚。
そのまま感情につられ、私は砕けきった氷を飲み込んでから霧森の頬に手を伸ばした。
が。
するんと手が通り抜けて、支えを無くした私はごちんとカーペットに頭をぶつける。
霧森は相変わらずそこにいて、避けようともしなかった。
「杉原花。俺がそんなに気になるか」
「えっ、え?…んなっ、ワケないでしょ!仏壇にでも行けばーか!ばか!」
「俺の頬に触れようとしてくれた人間は、今のところお前だけだぞ」
ふわー、と景色を揺らして去っていく霧森。
私はしばらく唖然として、そして。
「…わっ、わたしも、こんな顔を真っ赤にさせる幽霊なんて、初めてよぉ」
杉原花という私
(それが何かを知るのは明日かもしれない)
こいつら爆発しろ