ダーク・ファンタジー小説

Re: ぼくらときみは休戦中[短編・作者の呟き] ( No.30 )
日時: 2015/05/01 21:34
名前: 利府(リフ) (ID: ktFX/uOB)

※本編の核心に繋がる話、勘が良い方や普通に読みたい方はスルーでお願いします



更新したい気分なんだな(GWですねやったね)


















違和感を握る手が、明かりの灯る天井へと掲げられた。


逆光で黒く染まる小さな世界が、今の私とってはたった一つの拠り所だ。
目蓋を閉じるよりも、早く目をそむける事は出来ないけど。

廃墟と化した空間が、今の私には城にしか見えない。
だって辺りはもっと何もないんだから。

ぼろぼろの机に置かれたPCが、ちかちかと光を放っている。


寝られやしない。




「世界が緑に染まってくれるのは遠い未来なのでしょうか?」

ふと無意識に呟いた言葉が自分でも気になって、私はベッドから立ち上がって
PCへと向かう。


「答えを教えてくれるのは、これしかありませんね」

この世界が難解なテストなら、この電子機器は知恵の神でありカンニングペーパーだ。


甘美でも何でもないこの世を教えてくれ。
そうする必要もないのに、何も答えない電子機器が嘘をつかない事を祈っている。
血も涙もない、どれだけ開発されたとしても命を持つ事は無い。

ただ生きろと言われても分からないただの玩具である。



「頼む。お前しかいないんだよ」


突然、PCが喋りだす。
その声に一瞬驚くが、一つの可能性に気づいて、ふぅ、と息を吐き出す。


「———なんて、言ったら。怒るか、試したかった」



そしていつも通りの態度に感心まで覚える。
七色とは言えない極彩色を身に纏って、美しくも楽しげに部屋の中を舞う。


「坊」

「なぁに?」


「私はこの服の袖の中に蛾が入っても怒る事はありません」

「つまりそれはそういうことか」


けけ、と笑って彼は言う。
卑屈じゃないが、気味が悪い。



私を求めるこのお方は、世の行く末を見守るつもりなのだろうか。
それとも、今日。


「待ちかねてるでしょ?城塞都市に、一撃を与えることを」


必要もないマシンガンを撃ち込むつもりなのか。




「あなたは気が早すぎる。今はその一撃で、オセロの角が奪われてしまいます」

「あ、そう。興が逸れたなぁ、一戦やる?」


「やらないに決まってるでしょうが!!話聞いてました!?」
「苦手な癖して」


やっぱり今も昔も、私を世界に引き込んで離さない王者がいるのだ。
だから瞼を閉じても眠れないし、いくら暗くても眩しいひとが何故かいる。

悔しい。
私を求めるのは何でなのか。
それを教えてほしい。


「あれ、どしたの。え?泣いてるの?」


その顔を見て私は愕然とした。
久々に見たような気がする、そのおどおどした表情を。


「まだそんな顔が出来るのですか」

私が皮肉を込めて、喉から絞り出した言葉を彼はどう受け取るのだろう。
涙があふれてくる私の目を、彼はじいっと見ている。
そして。



「おいらには目がない。羨ましい、だから好き」



やっぱりひどい。拙い。
もっといいセリフを言えば良かったのに。


「私の目が、ですか?」

「お前は何でもできる。おいらは瞬きをして、指を銜えてるだけ」


嘘をついている目をしている。
そのうち一つは、歯車のような縫い跡で潰れてしまっているけど。



ああ、彼はそうだった。
ずっと真面目で愛なんかしらなったから、情操教育への考えがねじ曲がっている。




真面目な顔をしやがって。
心の中で昔のような悪態をつきながら、少し背伸びをして彼の額に頭をくっつけた。











いとしい復習
(素人のプロポーズを教えてよ)