ダーク・ファンタジー小説

Re: ぼくらときみは休戦中[短編・作者の呟き] ( No.35 )
日時: 2015/05/23 20:40
名前: 利府(リフ) (ID: ktFX/uOB)

本編参照1900突破おめでとう
いや、別に2000突破しても何も考えてないけどな。


※本編のストーリーと関わっています!
 ネタバレも何も知るかという方は下へどうぞ!










「もしもし?はじめまして、市松先生」


手に取った受話器からは、冷ややかな声が聞こえてきた。
窓の外で鮮やかに光っている太陽が、もう山に落ちかけている時刻の電話。
しかも第一声が“市松先生”となれば、私も一つの疑問を抱く。


「トヤマさん、トヤマさんの、お宅、ですか?」

いつも通りの口調で尋ねると、相手が受話器の向こうでくすくすと笑う。
それにむっとして、答えを促そうともう一声。


「私は、教師。教師、どうであろうと、教師として、電話を掛けて、かけて。いるん、です!」


最後の辺りは声を荒げてしまった。
すると、相手が遂に咳き込みながら笑いだす。



「だから、だから!!トヤマさ、」

「トヤマミコトとタケルの家系の者よ。私はその立場から電話をしているの」


急に笑い声が止まり、また背筋を震わせるような冷たい声が響いた。
声には出さなかったが、腕の方に鳥肌ができているような気が、する。

窓の外は暗くなってきた。


「お前は今、何をしているんですか。市松先生」


机に置かれた生徒のプリントに、テレビの放つ光が映る。
電気を消したままだから仕方はないが、眩しくて仕方がない、と目をそむける。


「今、ニュースで、ニュースで、男子生徒の事件を、調べてました…」


テレビ画面が僅かに暗くなった瞬間、プリントに書かれた文字が逆に明確に確認できた。


『賀台蓮太郎』

彼のデータは、不可解なままで終わってしまった。



「悪趣味ねぇ、市松先生。お前は、教え子の遊んでいる場所も知らないのか」

「お、教え子?あの子たち、あの子たちは、今どこにいるの?」



だんっ、と机をたたく音が、鈍く受話器の向こうから響いた。


「教師が戦争を知らなくてどうする!?お前は今、赤子に銃を持たせて
 暴発でもさせようと企んでいるようなものだ!!

 それに気付けないのなら、今すぐ城壁でも手配してやればどうだ!?」





確実に、訴えているような声だ。
そして、遠回しに要望を言っている。

ヘル。
愛しい生徒を、死神と呼ばれる男から守れ、と。



「…私の、私の。親戚が、北方領土に病院を持っています」


ふーっ、ふーっと猫が唸るような声をようやく聞き取れた。
頭の芯から、私が冷えていく。

多分、この人は…



「あの二人のお母様と、お母様と言うなら。私もクレームくらいは受けれます」





そう言うと、相手は短く乾いた笑いを残して、電話を切った。



(今度、トヤマさんに伝えよう)


賀台君の能力の秘密と、そしてもう一つの機密事項を。






白鳥と烏に、託すんだ。

私は電話帳を手にとって、件の病院の電話番号を探した。















オウムの電話の内容でした。
あとチエリ先生お久しぶりです。