ダーク・ファンタジー小説
- Re: ぼくらときみは休戦中[短編・作者の呟き] ( No.94 )
- 日時: 2016/12/23 04:41
- 名前: 利府(リフ) (ID: HW2KSCh3)
知ってますか。俺はけばけばしい女も男もきらいなんです。ここでずっと読書をしている優男だとあなたは思っているでしょうが。そんなこともお見通しなんですよ。何故か知ってますか。俺が物静かでいかれたくずのあなたが好きだからですよ。
こどもの頃からあなたに会いたくて仕方がなかった。あの日壊れてしまったあなたが、幸せに生きているのを一目見てみたかった。
あなたの赤いヘアピンを一度ぐらい外してほしかったのに、あなたはそれさえしてくれませんでしたね。俺を信頼してくれていなかったんでしょう、知っています。
ゴミ箱に投げ捨てる予定の人形みたいに扱ってすいません。でもあなた、投げ捨てられたことにも気づいてませんね。誰に捨てられたかって、それは神さまです。
あなたの知らないことを言いますよ。俺は、神だったことがあります。
もちろん信じても法螺だと切り捨てても構いません。だって聞こえてないんですから。
俺はもうあなたを捨てません。あなたから俺のだいすきなかぞくのにおいがするから。あなたの目の色がくすんでいるから。
俺のお母さんも、そうだから。
俺のお父さんは、あんたみたいによくにやにや笑うから。
俺の姉さんとあなたが、この世界のなによりも似ているから。
あなたといっしょに帰りたい。あなたと一緒にごはんを食べたい。あの時のように。
あの時あなたは、俺の■■であったけど。
そんなあなたを未だに愛しているのは皮肉ですね。
馬鹿二人が出会ってしまったものですよ。
ねぇ、あなたは俺のことをあの時愛していましたか?
俺は、今となってはわかりません。
あの時のあなたの名前は、美しい春を思わせるものでした。
あなたの名前を聞いた時、そんなイメージを持ちました。
それなのに欠陥品になってしまった、あなたを俺が■■■■■■ですよ。
そんな過ち、まだあってもいいと思うんですがね。
だから、何も覚えていないあなたに滑稽なお願いをします。
前よりもあなたを好きになってしまった俺を、どうか救ってくれませんか。
笑ってひとつ抱きしめてくれるぐらいでいいのです。あの凛々しい母の暖かいからだにふれたくて仕方が無いのです。父の笑った時のくしゃりとした顔をまた見たいのです。
姉と同じ水のにおいを嗅いでみたいのです。
キスまでだなんて求めません。
プラトニックラブとか、大それた意味のわからないものにしたいわけでもありません。
ただ、俺はあなたのコウハイじゃなくて、センパイでもなくて、
周りが馬鹿だと笑うような、恥晒しと蔑むようなものでもいいから、
なにか特別なものにしてほしいのです。
***
愛は未だ熟れない
(みどりのかじつはなんのあじ)