ダーク・ファンタジー小説
- 守るべきもの〜自衛隊を敵に回した元自衛官〜 ( No.2 )
- 日時: 2015/03/07 16:39
- 名前: 裏の傍観者 (ID: mNUslh/H)
状況1.桜ノ心ナクシ自衛官、国防官ヘ
「・・・さん?玲兄さん?・・・結美国防2等尉官!」
誰かに呼ばれ、薄れかけていた意識がはっきりと戻る。
薄れていたとしても、まわりから見れば意識が完璧に落ちてしまっていたのかもしれない。
目覚めると大勢の国防官がこちらを覗き込んでいる。
手には、飲んでいた飲み物がこぼれて半分になっていたコップが握られている。
「・・・こぼれたのか。」
コップを机に置き、ポケットからハンカチを取り出しこぼれた飲み物をふき取る。
「大丈夫ですか玲兄さん?」
紺色の戦闘服を着た国防官が心配しながら新しい飲み物を出してくれた。
「・・・どれくらい寝ていた、河瀬2曹官。」
「ざっと30分ってとこですかね。ミーティング中に落ちるなんて珍しいですね。何かありました?」
そうだ、今日は市街地戦闘について部下に事前教育をさせた後ミーティングを行っている最中だった。
こんなことで失敗をしてしまうとは、中隊長として情けない。
「大丈夫かよ玲也。」
「おう、心配してくれてありがとう。」
国防2等士官、貴志川 有。
国防軍に入隊し教育を終えたばかりの19歳の少年。
俺と同い年で、階級は違うが優れた射撃の持ち主で、中隊の狙撃手。
自衛隊にいたら、下っ端の分際で、尉官にため口とはなにごとかといわれそうだ。
だが、ここは自衛隊じゃない。
それに、こいつはおれにとって兄弟であり、敬語など不要だ。
堅苦しすぎても、仕方ないしな。
「兄さん、時間ないですが、どうします?」
曄目3等曹官はミーティングがどこまで進んでいるかを説明しながら、事後の行動を聞いてきた。
現時刻は1700。
あと10分で国旗が降ろされる。
業務はもうすぐ終わろうとしていた。
「俺が寝てしまったばかりに、時間を無駄にしてしまったようだ。すまんな、また明日にしよう。今日はこれで解散、そのあとは一人ジュース1本だ。」
『よっしゃぁ!!』
部下たちが喜びの声をあげる。
そういや、自衛隊にいた時もよく「ジュース1本」という言葉を使っていた。
おもにじゃんけんジュースの時にだが。
席を立ち部下を解散させる。
「今日も1日お疲れさん、終礼は省くぞ。外出する奴や家に帰る奴は事故の無いようにな。」
『オッス!!』
中隊は解散し、業務は終了した。
国防陸軍、第零攻撃戦闘大隊。
その中で、中隊長を務めて指揮っているのは第1中隊。
通称、結美中隊。
国防軍が初めて行った戦闘で、真っ先に前線に送られた大隊であり・・・自衛官だった俺が初めて戦った大隊でもある。
しかし、その戦闘はただのデモンストレーションだったらしく、世間ではあまり知られていない。
よく知られている戦闘は練馬前線。
デモンストレーションとして国防軍が最初に攻撃したのは、陸上自衛隊第1師団に属する戦車大隊。
俺の古巣だ。
東富士演習場で起きた戦闘は、世間からはただの演習だったのだろうと思われたらしく何とも感じなかったらしい。
戦場が練馬駐屯地付近になってからは世間はやっと目が覚めたらしく、練馬が火の海にされた時、日本中の人間はこう呼んだ。
練馬前線。
自衛隊に最初に攻撃したのはこの第零攻撃戦闘大隊だが、世間では第1歩兵戦闘団が攻撃したという認識が多い。
そのせいか、俺のいる大隊は零とつけれられてしまった。