ダーク・ファンタジー小説
- 守るべきもの〜自衛隊を敵に回した元自衛官〜 ( No.8 )
- 日時: 2015/03/08 13:59
- 名前: 裏の傍観者 (ID: 4J23F72m)
1040時、赤羽基地に突然出撃警報がなる。
<報告、報告!レッド発令、レッド発令!各部隊の指揮官は大隊作戦室に集合せよ!繰り返す、各部隊の指揮官は大隊作戦室に集合せよ!>
基地内でサイレンが鳴り響く。
「尉官は直ちに情報収集!曹官及び士官は出撃準備!車両は念のため全て準備させろ!あと日暮奈3尉官を大隊作戦室に呼び出してくれ!」
『了解!!』
部下達は迅速に動き出す。
メモ帳とペンをもって大隊作戦室へと走る。
それにしても珍しい。
この様子だと、自衛隊が先に動いたと見ていいだろう。
「自衛隊自らお出ましとはな、やりがいがある!」
大隊作戦室。
「諸君、つい先程中央国防基地から出撃命令が発令された。状況を説明したのち、直ちに出撃する。では、状況を説明する。」
プロジェクターがスクリーンに地図を映す。
しかも最悪なことにその地図は・・・神奈川を映していた。
「ヤジさん、もしや敵の狙いは国防省ということか。」
俺は大隊長である相模1佐官に聞いた。
神奈川に国防軍の関連施設があるとしたら、横浜市にある国防省だけだ。
「その通りだ、結美の言う通り、敵の狙いは国防省と思われる。」
すると指揮官達が騒ぎ始める。
「あいつら正気か!?」
「国民に被害が出たら、自衛隊だけじゃなく国防軍の存在すら問われるぞ!」
「これじゃ出撃すらできないじゃねぇか!」
色々な考えが飛び交う。
確かに、国民に被害がでれば、自衛隊だけじゃなく国防軍までもが責任を問われる。
元は自衛隊や国防軍も日本の領土と国民を守るために存在している。
その守り手が、国民を攻撃してしまえば、存在の意味がなくなる。
「静かに!」
相模1佐官が皆を黙らせる。
「敵の勢力なんだが、イーグルアイで記録された写真を分析した結果、敵戦力は戦車大隊と自衛隊で数少ないアパッチを全て投入したらしい。」
攻撃ヘリか。
対地戦闘能力だけでなく、対空戦闘能力をも兼ね備えたヘリコプター。
そいつが搭載しているミサイルは、戦闘機をも落とすことができるAIMー9とAIMー92がある。
その他にも、AGMー114ヘルファイヤやM230 30mmチェーンガンなどを装備している。
敵に回したくはない攻撃ヘリだ。
それが市街地に来るとなると、もっと最悪だ。
「市街地にあんなデカ物を投入するなんて、どうかしてるわ。」
「いや、可能だ。」
『??』
全員が俺に注目する。
市街地に適した戦車ならあいつがいる。
「陸自の誇る新型戦車、10式戦車だ。あれは元々市街地での戦闘を想定して作られたやつだ。小さく、そして恐ろしく速い。市街地での機動性は、おそらく10式戦車が圧倒的に有利だ。」
だが戦車が横浜市内に前進するには無理が多すぎる。
すでに戦闘態勢なら、トレーラーは使うはずがない。
かといって、そのまま自力で走ってくれば、燃料もそこを尽きるはずだ。
「結美、今回の作戦はお前さんに一任すると、鍛島総将官から伝えられている。」
「鍛島総将官が?」
「お前さんは元自衛官で、機甲科にいたんだ。何か知っていると言っていた。大隊の指揮官は結美2尉官に一任するが、反対の者はいるか?」
『なし!!』
即決された。
「では結美、頼む。」
「分かりました。」
相模1佐官に席を譲り、俺は前にでる。
パソコンを夕美から受け取り、彼女を補佐役に任命する。
この状況、どう解決するか。
考えはすぐにまとまった。
自衛隊がその気なら、俺が叩きのめす。
時間がないが、まずは情報収集だ。
戦車が直接来るには無理がある。
だとすればやつらがどう来るかだ。
10分おきに更新される衛星写真を見返す。
その写真は、起動したプロジェクターがスクリーンに映している。
「結美、この写真は?」
相模1佐が説明を求める。
「10分おきに撮影された衛星写真です。リアルタイムでとれているので、戦車がどれくらい出撃しているかを見ています。」
「なるほど、お前さんならではのやり方だな。」
自衛官だった頃、俺はその戦車大隊にいた。
駐屯地のパークと呼ばれる所に戦車は止めてある。
その数を今でも覚えている。
元自衛官で、その戦車大隊にいた奴でなければできないことだ。
調べている途中、ふと気づいた。
戦車が未だに止まっている。
それも全部だ。
距離もあるし、すぐにたどり着く訳でもない。
「ねぇ玲也。」
夕美が俺を呼ぶと、画面に指を指す。
「ここ・・・、隙間があるにしても広すぎない?」
「なんだと?」
夕美が示した場所を拡大する。
確かに隙間があるにしても広すぎる。
いや待て、確かここに置いてあったのは・・・。
「3トン半とWAPCか!!」
自衛隊の大型トラック、3トン半。
人員や、機材などを運ぶために使われている。
そのトラックとWAPCがないということは・・・。
「戦車は来ない。」
「なんですって?」
なるほど、やつらは装甲車を基準とした戦闘をお望みか。
なら話は早い。
俺はすぐに作戦を皆に伝えた。
戦車が来ないと言ったときは皆驚いていたが、反対の声はなかった。
作戦は簡単だ。
今まで行ってきた攻撃戦闘から、防御戦闘に変えればいい。
ヘリで人員と車両を国防省に輸送し、自衛隊が到着するまでの間にできるだけ多くの防御陣地を構築させる。
国防省の建物の中に侵入されても押さえられるよう、中にも防御陣地を構築させる。
屋上など、狙撃できるポイントには狙撃手を配置させ、敵を足止めする。
これが今回の作戦だ。
今回は本格的な防御戦闘になる。
皆士気を高めて、すぐに出撃の準備を終えた。
状況開始だ。