ダーク・ファンタジー小説
- 守るべきもの〜守リ手ノ戦争〜 ( No.20 )
- 日時: 2015/03/14 22:24
- 名前: 裏の傍観者 (ID: hmF5PELO)
1535時、横浜市内建造物 狙撃位置。
目的地にたどり着き、建物内に自衛官がいないかをクリアリングしながら確認していく。
結果的にはいなかった。
屋上へ上がり、貴志川がへカートⅡを準備させた。
「弾は中破したWAPCから一箱持ってきたわ。」
「サンキュー、繋がっているリンクをはずして弾を単体にしてくれ。」
「分かったわ。」
重機関銃に装填する際、弾はリンクという金具で繋がれている。
戦争映画で良く出るのが、繋がれた弾を体に巻き付けて機関銃を連射するシーンが良い例だ。
アパッチは国防省に釘付けだ。
やるなら今しかない。
「貴志川、やれそうか?」
「任せな。ガンナーを直接やらなくても、機材を破壊するれば攻撃はできなくなる。」
「なんだ貴志川、人をやるんじゃなかったか?」
「さすがにスコープを赤で染めたくはないからさ。」
要は血を見たくないということだろう。
今まで自衛官を狙撃してきた貴志川だが、狙っている所が防弾チョッキで弾を当てて脅すだけの戦い方をしていた。
発砲して相手の流す血を見たことがないのだろう。
「分かった、だがヘリだけは落とすなよ。」
「了解。」
貴志川が狙撃態勢に入った。
夕美は屋上に敵が入ってこないよう扉の近くで見張りをしている。
アパッチのチェーンガンが動き出した。
照準先は国防省正面ゲートのバリケードだ。
「させるかよ!」
貴志川が引き金を引いた。
大きな銃声が鳴り響き、へカートⅡから弾が放たれた。
弾の速度が速すぎて見えなかったが、数秒後にアパッチに弾が命中した音が聞こえた。
双眼鏡で覗いてみると、弾は見事ガンナーの機材に命中していた。
だが、機材が破損した際に飛び散った破片がガンナーの体に突き刺さっていた。
軽傷で済んだのか、ガンナーは破片を引き抜き応急処置をしていた。
それ以降チェーンガンは動かない。
やったのか?
「目標に命中、ガンナー軽傷。ドライバーは・・・、ヘルメットが破損しただけだ。」
ドライバーのヘルメットが割れているのが確認できた。
「計算してな、念の為ドライバーのヘルメットも破壊しておいた。」
「良い腕だな。」
これで1機目のアパッチは戦闘が出来なくなった。
アパッチは機体を旋回させて飛び去っていく。
「目標の後退を確認。次やるか?」
貴志川はへカートⅡのボルトを操作して次弾を装填した。
攻撃を受けたアパッチは他の機に報告をしただろう。
場所を変えないといずれ気づかれる。
ふと気づく。
下でなにやら人が集団で動いている。
市民にしては動きがぴったり過ぎる。
手には・・・様々な小銃が握られている。
戦闘服の迷彩柄はどっからどうみても陸自迷彩だった。
「貴志川、夕美!急いで撤収だ。」
89式小銃2型に弾倉を差し込む。
「え、まだアパッチが残ってるぞ。」
「下に敵だ、さっきの銃声で気づかれたらしい。」
「待ちなさい、市民じゃないの?陸自がここまで展開しているというの?」
市民にしては動きが良すぎる。
一般の隊員ではない。
だとしたら・・・。
「運の悪いことに、特戦群だ。」
「おいおい、冗談だろ・・・?」
「まさか、玲也を・・・!」
「話は後だ、追い付かれる前に退避だ。」
撤収をすぐに完了させて下に降りる。
止めてあった装甲高機動車に2人を乗せる。
運転席には夕美を乗せた。
「玲也、貴方まさか!」
「安心しろ、こんな所で死ぬつもりはない。命令だ、直ちに国防省に戻れ。その場で大隊の指揮をとり、防御陣地を立て直せ。俺はここで特戦群を足止めする。俺の部下にこいつらの相手は無理だ。貴志川は当初の持ち場に行け。いいな2人とも。」
「分かった、死ぬんじゃねぇぞ。」
夕美はまだ納得していないのか、心配しながら俺を見ている。
そんな彼女の頭を撫でる。
「玲也・・・?」
「そんな顔をするな、いつものように帰ってくる。そしていつも通り外出して、一緒に飯食いに行こう。いいな?」
夕美は泣くのを我慢しているが、目からは涙が溜まっている。
「いいな?夕美。」
「・・・分かったわ。」
彼女は目を擦る。
「日暮奈3等尉官、行動を開始せよ!」
「了解!・・・必ず帰って来なさいよ、バカ!」
夕美はアクセルを限界まで踏むと、装甲高機動車は全速力で国防省へと走っていった。
「久しぶりに、直接自衛官と戦闘か。」
今まではほとんどが指揮で前線には出ていなかった。
今回やりあうのは一般の連中じゃなく、手強い特戦群だがそんな事は関係ない。
あいつらを国防省へは絶対に入れさせない。
「特戦群の1人や2人は殺ってやる。」
俺はもう、自衛官だった頃の平和ボケした人間じゃない。
それを奴等に刻み付けてやる。