ダーク・ファンタジー小説
- 守るべきもの〜守リ手ノ戦争〜 ( No.24 )
- 日時: 2015/03/15 22:03
- 名前: 裏の傍観者 (ID: 0exqyz.j)
1635時、交差点。
空が暗くなり始めてきた。
このまま夜戦に持ち込まれそうだ。
ひとまず、暗視装置JGVSーV8を被っているヘルメットのマウントアームに取り付けた。
米軍で使用されている暗視装置を、日本がライセンス生産した暗視装置。
自衛隊でも使用されていて、隊員からは「V8」と呼ばれている。
特戦群と戦闘をはじめてから約1時間。
敵戦力は残り5人。
その中に、まだ三溝1曹が含まれている。
他の連中は、C4爆弾やクレイモア、貴志川が残していったへカートⅡで体を粉々にして天に送ってやった。
正直、特戦群相手によく1人で戦えたものだ。
戦闘が終わり、無事生還できたら、自分にご褒美をくれてやりたい。
「ぐッ!?」
撃たれた右腕から再び激痛が走る。
先の銃撃戦で、三溝1曹に撃たれてしまった。
奴も、俺が放った拳銃の弾が命中し、足を負傷している。
命中したのは足の大動脈付近。
もしかしたら出血したままかもしれない。
にも関わらず、平然と動ける奴は一体何なのだろうか。
化け物としか言いようがない。
生憎、俺は小銃を撃つ際は左利きなので射撃に支障はない。
残弾は、弾倉5つで150発。
そのうち弾が尽きて拳銃だけで戦う羽目になる。
足音が聞こえてきた。
「もう接近してきたか・・・。」
国防省に近づかせることを避けるため、市役所方向へと向かい特戦群を誘き寄せている。
これだけ離れれば十分かもしれない。
だが、三溝1曹は俺が市役所方向へ走り出した時表情を変えていたのを覚えている。
俺はその時、攻撃してきている自衛隊の作戦本部はおそらく市役所だと気づいた。
それから特戦群からの銃撃が激しくなり、負傷してしまった。
「結美2尉官、そこまでだ!大人しく武器をおろし、執行されろ!」
三溝1曹だ。
「冗談じゃない、誰が自分から執行されに行くか!馬鹿か貴様は。」
「どうやら、本当に死にたいらしいな。」
「本音が出たな、三溝1曹。」
弾を装填し、小銃を構える。
「来るがいい三溝1曹、天を拝ませてやる!」
「面白い!」
互いに一斉射撃をする。
三溝1曹を囲んでいる隊員がうるさい。
手榴弾を2つ投げる。
それに気づいた三溝1曹は隊員に退避を指示するが、間に合うはずもなかった。
三溝1曹以外の隊員は爆発に巻き込まれて吹っ飛んだ。
あとは奴のみだ。
「結美2尉いぃ!!」
「三溝1曹おぉ!!」
小銃で正確に狙いを定め、発砲しては全力で走る。
かわした弾が商店の窓ガラスを割る。
俺が放った弾は、かわされてガソリンが漏れた車に命中し爆発した。
互いに距離を縮めて接近する。
そして・・・。
「チッ!」
「ッ!!」
0距離となり、その場で互いに小銃を向け合った。
炎上している車の炎で、今立っている場所が照らされる。
「貴様、左利きだったか。通りで右腕を撃ち抜いても、射撃出来るわけだ。」
「そういう三溝1曹こそ、足撃たれて出血しているのに平然と動けてる貴様は化け物だな。」
お互い引き金は引かなかった。
向け合っている小銃は、弾がなくなり貢幹が後ろで止まっていた。
引き金をいくら引いても弾が出るわけがなかった。
すると横浜市内にサイレンが鳴り響いた。
携行している無線機からは・・・。
<戦闘中の国防官に告ぐ。現時刻をもって戦闘を停止せよ。繰り返す・・・。>
相模1佐官の声だ。
三溝1曹が携行している無線機からも、戦闘終了の放送が流れていた。
「残念だったな、執行できなくて。」
互いに向け合っていた小銃を下ろす。
「失敗ではない。」
「ほう?」
「貴様のような戦闘慣れしている奴と戦ったのは初めてだ。前までは海外派遣でテロリストと戦ってきたが、一方的で終わってきた。」
「・・・戦いを楽しんでいるのか。」
こいつ、とんだ戦闘凶だな。
「本性はそんなものだ。」
「強い訳だ、そういう奴ほど馬鹿みたいに力がある。」
さてこれからどうするか。
このまま一人で国防省に戻るのも寂しい。
なら、話し相手で三溝1曹も連れていこうか。
「プライベートでも、敵同士である貴様とは仲良くするつもりはないが少し話さないか。」
「いいだろう。」
国防省に向かって、俺と三溝1曹は話をしながら歩いた。