ダーク・ファンタジー小説
- 守るべきもの〜守リ手ノ戦争〜 ( No.25 )
- 日時: 2015/03/15 12:24
- 名前: 裏の傍観者 (ID: NGqJzUpF)
1740時、国防省 正面ゲート。
話をしながら歩き続け、気づけば国防省にたどり着いていた。
三溝1曹は国防省にたどり着く前に、バラクラバを被り顔を隠した。
「結美2尉官を確認!無事だ!!」
『おぉツ!!』
大勢の国防官が喜びの声をあげた。
貴志川が全力でこちらに走ってくる。
「この馬鹿野郎!やっと戻って来やがったか!!」
「やめろ貴志川!痛いだろうが!」
貴志川の腕が俺の首にかけられ、絞め技を決めてきた。
「やめねぇよ!夕美を泣かした罰ゲームだ!」
「駄目じゃないですか兄さん、日暮奈3尉官泣かしちゃ。」
華目3曹官が笑顔で出迎えてくれた。
「華目3曹官、河瀬2曹官は?」
「俺なら無事ですよ!まぁ、車両がいくつかぶっ飛んじまいましたけど!」
「忙しくなるな、早くその腕直して処理してくれ。」
「もちろんですよ!」
河瀬2曹官はそういって愉快に笑い出す。
相変わらずのテンションだな。
「玲也!!」
声のした方向を見る。
そこには夕美が立っていた。
その背後に、大勢の国防官がカメラや携帯を手にしている。
「さ、感動の再開だな。」
そういって貴志川達は俺から離れた。
三溝1曹は無言でその場に立っている。
にやけているのがバレバレだぞおっさん。
夕美には結構心配をかけてしまったに違いない。
「・・・ただいま、夕美。」
「この・・・バカ!」
夕美は俺に向かって走り、飛び付いてきた。
俺はそれをしっかりと受け止めた。
「1人で戦おうとしないでよ!どれだけ心配したと思ってるの!?」
夕美は泣いていた。
「悪かったよ、だから泣くな。約束通り、俺は帰ってきたぞ。」
俺は彼女の頭を撫でる。
夕美のやつ、クールな性格なのに寂しがり屋だな。
時々甘えん坊だが。
「その腕どうしたの・・・?」
「これか?」
撃たれた右腕に巻いていた包帯が真っ赤に染まっていた。
「撃たれた腕か。」
「撃たれたの!?」
「心配するな、かすった程度だ。一番ヤバイのは後ろにいる化け物だよ。」
俺は三溝1曹に顔を向ける。
貴志川達は警戒をする。
「な、何だお前は!」
貴志川が驚いて奴から離れた。
「まさか特戦群なの!?」
皆は武器を手にし始めるが俺はそれを止める。
「やめろ、戦闘はもう終わってる。・・・足は大丈夫か?」
「たいしたことではない、手術は受けるかもしれないが、その内治る。」
華目3曹官は三溝1曹の足を見る。
「足の大動脈付近に貫通銃槍・・・!なんで立っていられるんだ!?」
そういって彼は包帯を新しく巻き直した。
「そういう貴様こそ、腕は大丈夫なのか?かすったとは言っていたが、実際は貫通したのだろう?」
「アンタよりはマシな方だ。・・・さっさと手術しろよ。」
すると、三溝1曹は俺にメモ紙を渡してきた。
俺はそれを受けとる。
「何だこれは。」
「会えたらまた会おう。良い話が聞けてよかった、礼として奢ってやる。」
そういって奴は黙って自衛隊と合流した。
ふと気づく。
正面ゲートに止まっている自衛隊車両に、神野達がいた。
神野は心配した顔で俺を見ている。
吉川は俺に軽く手を振っていて、波森は俺に向けて中指を立てていた。
今は敵同士だが、いずれまたどこかであいつらと遊びたい。
メモ紙には、三溝1曹の連絡先が書かれていた。
「貴方腕貫通したの!?もう無茶ばっかりして!」
「兄さん、今日は大人しくしていてください、搬送します。・・・衛生班、担架を持ってきてくれ!」
衛生班が担架を持って来た。
「玲也、後は任せてその腕どうにかしてこい。」
「分かった、夕美は同行してくれ。」
「言われなくても行くわよ、看病してあげるわ。」
「大袈裟だな・・・。」
俺はチヌークまで運ばれる。
途中、相模1佐官に呼ばれる。
「よくやった結美2尉官。」
「ヤジさん。」
「ゆっくり休んで、怪我を治してこい!後は俺に任せろ。」
「そうさせてもらうよ。」
さっきの戦闘で疲れたのだろうか、眠気が襲ってきた。
チヌークはエンジンを始動させ、空に飛び立つ。
空は暗くて星しか見えないが、下は町の光で綺麗な夜景になっていた。
「眠いの?」
「あぁ、しばらく寝る。」
「分かったわ。」
夕美は俺の頭を膝の上に乗せる。
膝枕ってやつか。
そういや、昼間夕美に膝枕をさせた記憶がある。
次は夕美の番ということか。
「お休み、玲也。」
俺は目を閉じて眠りに落ちた。