ダーク・ファンタジー小説
- 守るべきもの〜守リ手ノ戦争〜オリキャラ募集中!! ( No.42 )
- 日時: 2015/03/22 08:08
- 名前: 裏の傍観者 (ID: cYeSCNTQ)
1230時、会議室。
静かすぎる空気に俺は正直退屈していた。
それもそうだ、ここは陸自の駐屯地であって、目の前に自衛隊のお偉いさんが数人並んで座っている。
相模1佐官はさっそく厳重に封がされた封筒を渡す。
「これは国防長官からの手紙だ。」
「確かに受け取った。・・・全く、アパッチを破壊されたからといって騒ぎすぎだ。」
「珍しく意見が合ったな。」
それから相模1佐官と陸自のヘリコプター隊の隊長は雑談を始めてしまった。
相模1佐官からは自由にして良いと言われ、ヘリの隊長からも駐屯地内を自由に回って良いと許可も得たのでアパッチの置いてある格納庫に足を運んだ。
夕美と貴志川は念のため、移動手段である車両の見張りをしている。
それにしても、本当に貴志川の射撃は化け物だ。
あの距離でよくコックピット内の機材を壊せた。
中を除いてみると、前部座席のモニター等は全部吹っ飛んでいた。
「あとで貴志川に射撃賞渡さないとな。」
「このアパッチはお前の部下がやったのか?」
後ろを向く。
そこには空自の戦闘服を来た女性自衛官が立っていた。
「何の用だ?」
「自衛官を殺した気分を聞きに来たんだよ。」
その時、心のそこから怒りが込み上がってきた。
「喧嘩を売っているのか?」
「だとしたら?」
「こうするまでだ。」
俺はレッグホルスターから拳銃を引き抜き、彼女に向ける。
シグ・ザウエルP226が鈍く光る。
「この場にいる自衛官を全員殺すなんざ容易いことだ。それに、どういう考えかは知らんが、俺には自衛隊にいい思い出は無いんでな。貴様に聞かせる武勇伝なんざ何処にもない。」
「あっそ。」
彼女が最初から戦う気がないと感じた俺は拳銃をおさめた。
「国防官になって、何が変わった?」
彼女はそういってアパッチに近づく。
壊されたアパッチがそんなに珍しいのだろうか。
「・・・変わっちゃいない。ただ桜の心をなくして自衛官をやめただけだ。強引だったが。」
「桜の心・・・か。私は最初からそんな心は持ち合わせてない。自衛隊なんて糞な集団は、平和ボケの象徴で、ただの飾りだ。」
確かに、今まで経験してきた自衛隊での生活・訓練は平和ボケのせいで全然実戦で戦えるような状態ではなかった。
階級の一番低い自衛官は自分の尻がふけない上官の代わりに毎日ただひたすらに清掃と雑用ばかりだった。
上官は仕事が終わっても働く新隊員と違い、だらけた時間を過ごす。
表では絆だの叫んでいるが、そんなのただの口先だけだ。
その地点で絆や団結なんて最初から存在しない。
入隊した新隊員は上官の餌食となるのが真実だ。
「私は正直自衛隊なんて消えてほしいと思ってる。」
「この戦争が嫌なのか?自衛隊にとっちゃいい機会だと思うがな。俺たち国防軍は対抗部隊として出てる訳じゃないが、正直自衛隊の実戦的ではない戦法には呆れているが。」
「そんなわけねぇだろ。・・・殺されたんだよ、自衛隊に。」
「恋人をか?」
「両親をだよ。私がまだ12のガキだった時、父さんと母さんは空自で苛めにあったんだ。」
未だに自衛隊での苛めは消えていない。
俺が元いた戦車大隊もそうだ。
先任曹長に対して3等陸曹の分際でため口で馬鹿にするアホも入れば、下の階級で、1等陸士や陸士長の馬鹿どもが2等陸士に対し全てを押し付けさせたり、出来なかった事で先輩にいちいち呼ばれ、馬鹿みたいになぜ出来なかった事を質問攻めしたり笑って馬鹿にしたり。
思い出すだけでも自衛隊を本気で潰したくなるくらい殺意が沸く。
駒門の戦車大隊に限ったことではない、大宮の普通科も師団で初の自殺者を出してしまっている。
未だに改善のひとつも見られない自衛隊はもう消えていいと思う。
「ならなぜ空自になった?」
「私が上官になって、自衛隊を片っ端から捻り潰すためだ。今の階級ではまだ力が足りない。」
彼女の階級を見ると、2等空佐の階級章がついていた。
「なるほど、内部から徐々に片付けていくという腹か。悪くないな。」
そろそろ時間なので格納庫を後にする。
「あんたこそ、なんで自衛官を殺してまで国防官になったんだ?」
足を止めて俺は彼女の質問に答えた。
「教えてやっただけだ。人を殺す事と、自衛隊の存在意義や恨みをもった人間の恐ろしさというやつをな。」
「・・・あんたも同じなんだね。」
「貴様の両親よりは小さい事だ。だが、自衛隊の存在意義については貴様ら自衛官も考えるべきだ。・・・そう思わないか風神2佐。」
「そうだな、結美2尉官。」
俺は再び彼女に背を向けて歩き出す。
きっと、自衛隊には彼女のようにたくさんの隊員が自衛隊に恨みなどをもったやつがいるのかもしれない。
だが、今の俺はそいつらを救うことはできない。
俺は国防官だ、悩める自衛官に対して俺が出来るのは・・・殺すことだけだ。