ダーク・ファンタジー小説

Re: 守るべきもの〜守リ手ノ戦争〜オリキャラ募集中!! ( No.45 )
日時: 2015/03/25 12:34
名前: 裏の傍観者 (ID: bAREWVSY)

1500時、結美家。

料金を支払い、タクシーを降りる。
目の前には、とても懐かしい実家があった。
国防官になってから全く乗っていない俺の車はきれいにされていた。
「ここが貴方の実家なのね。」
「あぁ、俺の人生はここから始まったんだ。なくなったとしても、存在は消えることのない故郷であり、結美家の宝だ。」
行こうとしても、なかなか歩み出せない。
せっかくここまで来たというのに、情けない。
「・・・行かないの?」
夕美は相変わらず心配性だ。
だが安心した。
こんな俺でも、心配してくれる人がいる。
これだけでも俺にとっては大きな力だ。
「・・・行こうか。」
玄関まで進み、チャイムを鳴らす。
「はい。」
中から親父の声がして、玄関に近づいてくるのが分かる。
鍵が開けられ、扉が開いた。
「久しぶりだな、親父。」
「玲也?玲也なのか!よく帰ってきたな!待ってたぞ、疲れただろう。」
「別に疲れちゃいない。」
どんな反応をするか少し心配だったが、親父は相変わらずだった。
「そこの彼女は?」
親父は夕美を見て驚いていた。
まるでいつの間にか結婚していたのかという顔をしていた。
「仕事で一緒に働いている仲間だ。」
「初めまして、日暮奈 夕美です。」
「綺麗な彼女さんか!やったな玲也!」
「親父、まだ結婚していないからな。」
勘違いもいいところだ。
「とりあえず中に入りなよ、母ちゃんも喜ぶぞ。」
「おう。」
「お邪魔します。」
家に上がり、リビングに入る。
「母ちゃん、玲也が帰ってきたぞ!」
「玲也!!心配したのよもう!お帰りなさい、お茶出すわね。あら、綺麗な美人さんは誰なの?」
「日暮奈 夕美、仕事仲間だ。」
「初めまして、玲也のお母さん。」
「いい名前じゃない!さぁさぁ、そこに座って。お茶いれるわね。」
久しぶりにリビングのソファに座る。
さっきから夕美は落ち着きがない、緊張しているのだろうか?
「夕美、緊張することはない。ゆっくりしててくれ。」
「どうしても緊張しちゃうのよ・・・。」
「無理もないか、いきなり他の人の家に連れてきたからな。」
「私の事は気にしなくてもいいから、話したいこと話してきなさい。私はここにいるわ。」
「ありがとう、夕美。」
お袋がお茶をいれて戻ってきた。
冷たいお茶が机に用意された。
「日暮奈さんと仲がいいんだな玲也。」
親父はつけっぱなしになっていたテレビを消した。
「防衛省から直接連絡がきた。お前が脱柵して国防軍に寝返ったと知らせがきた。」
「俺が自衛官を殺したことは?」
「聞いたよ。」
「そうか。」
あまりいいことではないのは承知の上だ。
「だが、報道でやっていた自衛隊の裏の世界を見たときは、俺も納得した。お前が自衛官を殺した理由もな。それから母ちゃん泣きっぱなしだったよ。」
「玲也はもう二度と帰ってこないんじゃないかって考えてたわ。でも今ここにいる。例え国防官になっても、国を守っていることに変わりはないってお父さんに言われたわ。貴方の元気な顔が見れただけでも私は幸せよ。」
「ありがとう、親父、お袋。そういってもらえると助かるよ。」
この時俺は実感した。
一人じゃない。
これだけは確かに言える。
「玲也、国防官になったんだな。階級は新米か?」
「いや、2等尉官だ。」
俺は身分証を親父に見せる。
身分証は自衛隊同様、紛失してしまうと重度の処分を受ける事になる。
外出時などは脱落防止を確実に行っておかなければならない。
「いきなり幹部か?責任が大きいな。」
「当たり前だ、伊達に中隊長やってないよ。」
部下を負傷させてしまっても、彼ら自身ではなく俺の責任だ。
中隊長として当然の事。
「中隊長か、頑張れよ!せっかく帰ってきたんだから、晩飯食べてけ。よかったら日暮奈さんも。」
「そんな、悪いですよ。」
まぁ、初対面の人なら遠慮はするよな。
「夕美、遠慮するなよ。」
「でも・・・。」
「心配でついてきてくれたんだろ?なら、礼くらいはさせてくれよ。」
何度彼女に心配されたか。
他人に俺の事を心配してくれる人がいるのは、俺にとってはかなり嬉しい。
「そうね、そうするわ。」
「おう。お袋、俺も手伝うよ。」
「ありがとう、それじゃ、野菜切ってくれる?」
「あ、私も手伝います。」
夕美が上着と装具を外してリビングに入る。
それを見たお袋は驚いた。
「まぁ!スマイル抜群じゃない!」
「え!?そ、そうですか?」
「玲也、いい彼女持ったじゃない!」
「聞いて恥ずかしくなるような事を言うなよ!?」
全く、こっちはこっちで相変わらず賑やかだった。