ダーク・ファンタジー小説
- 守るべきもの〜守リ手ノ戦争〜オリキャラ募集中!! ( No.62 )
- 日時: 2015/05/18 06:42
- 名前: 裏の傍観者 (ID: lU2b9h8R)
臨時呼集が終わり、解散となった。
やっとの事で落ち着いた俺は、椅子に座る。
「毎度ながら、この中隊は戦ってばかりだな。」
「それほど貴方を信頼しているからじゃないかしら。」
机にお茶が出される。
「はい、貴志川。」
「サンキュー!」
お茶を配り終えた夕美はソファーに座る。
例の書類のコピーした書類を見る。
国防大臣直々の出動命令、そして隠密作戦。
もっと驚いたのは、その作戦内容だ。
例の武装集団の手掛かりを見つけ出すことと・・・・。
『新宿駅西口で国民を銃撃した組織の指導者を拘束、または射殺。』
一番したの文章に、はっきりとかかれていた。
「これじゃまるでビンラディン暗殺みたいだな。」
「なに縁起の悪いこと言ってるのよ。・・・でも、確かにそうね。」
「俺、人の眉間に一発ぶち込むのは気が引けるぜ。」
「凄腕のスナイパーがもう弱気なの?」
「夕美も知ってるだろ、戦闘中俺は防弾チョッキや腕撃って足止めするくらいなんだぜ。まぁアパッチ狙撃して壊した俺に説得力はないんだろうけどよ。」
確かに、凄腕のスナイパーと呼ばれている貴志川は人を殺すような狙撃はしたことがない。
やる気になればやれるはずだろうが、彼も人間だ。
俺みたいに簡単に人が殺せるような奴ではない。
待てよ、簡単に人が殺せる?
考え付いた俺は早速行動に出る。
「貴志川、扉しめて鍵かけろ。」
「お、おう。」
貴志川は扉を閉めて鍵をかける。
豪華な作りをした机の下に潜り、床をスライドさせる。
結美中隊の事務所や中隊長室等はこの隊舎の1階にある。
だが、中隊長室には密談で使用される部屋が必ず存在する。
俺が今いる中隊長室でその部屋の入り口があるのは、この机の下に入り口があり地下に存在する。
「懐かしいな、また使うことになるとは。」
俺はそういって夕美に笑顔を見せる。
「な!?」
夕美は顔を真っ赤にして、心拍数が上がったのか胸に手を当て始めた。
「どうした夕美?」
貴志川が心配して夕美に近づく。
「な、なんでもないから・・・!心配してくれて・・・あ、ありが・・・とう。」
貴志川は俺を見てアイコンタクトをする。
「(夕美がめっちゃ可愛らしいんだが何があったよ!?)」
「(さぁ、俺にはさっぱり。)」
「(じゃあなんでクールな夕美がめっちゃ乙女ティックになってんねん!?)」
「(そりゃ女だからだろうが!?)」
さて、こんな会話は後にして隠し部屋に移動する。
「貴志川、お前から入れ。」
「お、おう・・・。」
貴志川は恐る恐る入り口に入りそのまま地下に潜った。
「ほら、夕美。」
「・・・・どうしてこんなに恥ずかしいのよ。」
「フラッシュバックか。・・・いいんだよ夕美、あの時は無理して強がって疲れてたんだろ。人間誰だって泣きたくなる事はある。俺も昔は泣き虫だった、恥ずかしがる事はないよ。」
人間で一度も泣いた事がないとしたら、あり得ない話だし、人間ではない。
「こんな時に優しくされたら・・・ッ!」
俺は夕美を落ち着かせるために頭を撫でる。
「落ち着けよ、な?それに今は重大な任務がある。」
「・・・そうね、ありがとう。落ち着いたわ。」
「おう、それじゃ行こう。」
夕美を先にいれて、最後に俺が入る。
床をスライドさせて入り口を隠し、階段を降りて部屋に入る。
「こりゃすげぇ・・・、隠し部屋なのに広いな!」
貴志川が隠し部屋に入って興奮していた。
「・・・・会議の時は一度も休んでないから、少し休もう。30分休憩だ、寝てもいいぞ。」
「マジ!?寝不足だったんだ、助かるぜ。おやすみ!」
そういって貴志川は個室に入り睡眠をとる。
夕美はなにかを考え込んでいる様子だ。
「夕美、お前も休んでおけ。これから先は忙しくなるんだ。」
「・・・うん。」
地下部屋は和室と休息用の個室で別れている。
俺なんかは残業でよくここを使って仕事をしていた。
「ねぇ。」
夕美に呼ばれ、俺は彼女の隣に座る。
「なんだ?」
「貴方の隣で寝ていいかしら・・・。」
「おう。」
「ん・・・。」
夕美は頭を俺の肩に寄せる。
それ以降、夕美は寝息をたてて眠った。
4ヶ月前、練馬前線での戦闘の後に夕美が2人きりで話がしたいと相談してきた。
その際に使ったのがこの地下部屋だ。
夕美は自身の事を俺に話してくれた。
両親を亡くし、夕美はその後群馬の親戚に引き取られた。
中学に入ってから、親戚に自分から強くなりたい、一人で頑張るといって一人暮らしを始めた。
それから高校まで一人で暮らし続けるも、彼女はか弱い女の子だ。
心に大きく寂しさが残ったらしい。
それを国防軍に入ってからもずっと隠し続け、強がる仕草を皆に見せてきた。
だが、それでも寂しさは心から消えることはなかったという。
あの時の夕美を思い出す。
「(本当に、私って弱い人間よね・・・。)」
「(・・・・・・。)」
「(親戚に心配されたけどそれでも大丈夫って言ったの。・・・でも平気なわけなかったわ。大好きだった・・・愛してたお父さんやお母さんとは、中学まではずっと一緒にいたのに・・・。)」
「(ご両親はどうして?)」
「(お父さんは仕事で亡くなって、お母さんは自殺したのよ。・・・自殺した理由が私の実の母じゃないから・・・。)」
「(・・・・。)」
「(でもそれでも私はあの人をお母さんだと呼びつづけるの。・・・親戚から聞いた話によれば、私の実の母は浮気女だったらしいの。そんなの、母親とは呼べないし、呼びたくもない。・・・玲也だったらいやでしょう?)」
「(俺だったら、関わりすら持ちたくないな。)」
「(・・・どうしてもお父さんやお母さんの死を認めたくはなかった。我慢できないのよ・・・、もう一人じゃ嫌なの・・・。)」
「(・・・そうか。)」
しばらく俺はどうしたら彼女は一人にならずに済むかを考えた。
彼女は俺よりも辛い事を経験し、嫌な過去を持っている。
俺はそんな夕美を放って置けない、そう考えて決心した。
「(なら、俺が一緒にいてやる。)」
「(え・・・?)」
「(言ったろ、お前は結美中隊の仲間で、家族だと。なら、家族を助けてやるのは当たり前だろう。・・・それにな、よくここまで一人で来れたな。話を聞いただけだが、俺にはその辛さが胸に伝わってきた。)」
俺は夕美を優しくそっと抱き締める。
「(辛すぎて疲れただろう、もういいんだ。一人でいる必要はない、だからな?今ここで疲れを吐き出そう。)」
「(玲也・・・?)」
「(中隊長として、いや・・・俺個人として誓う。・・・夕美を一人にさせはしない。国防官をやめても、一緒にいてやるから。だから安心して休め。)」
「(あッ・・・りが・・とう・・・!)」
その後夕美はありがとうといいながら泣き続けた。
30分かけてようやくぐっすり眠ったのを今でも覚えている。
俺はその時に夕美のすべてを受け止めた。
一人にはさせない、俺はそう誓った。
誓ったはずが、あの時は1人にさせてしまった。
今でも反省している。
だからもう一度、この場で誓う。
「・・・夕美、お前を一人になんかさせない。これからも、ずっと。」
「・・・ん〜。」
俺はつい笑ってしまう。
さっきのはまるで、俺の誓いに夕美が答えたようだった。
腕時計のタイマーを起動し、15分後に鳴るよう設定した後に俺もしばらく睡眠をとった。