ダーク・ファンタジー小説
- 守るべきもの〜守リ手ノ戦争〜オリキャラ募集中!! ( No.75 )
- 日時: 2015/07/29 22:52
- 名前: 裏の傍観者 (ID: hDHJ7fvN)
気づけば時間は午前4時をさしていた。
ラーメン店で食事をした俺と三溝1曹。
閉店時間にも関わらず、店長であるおやじさんは水や軽い食べ物を絶えず出してくれる。
「すまないおやじさん。」
「いいってことよ!お客さんの中には仕事で悩んでるやつが数え切れねぇくらいいっからよ、ゆっくり話し合いな!」
そういっておやじさんは今日の営業準備をするため自室に戻った。
「・・・仕事の悩み、か。」
三溝1曹はそういっておやじさんが出してくれたチャーシューを1枚口にする。
「あんたにもあるのか?珍しいな。」
「色々な。・・・結美2尉官、新宿の件で絡んでいるのだろう。」
俺は警戒をする。
三溝1曹が知っているということは、すでに自衛隊にもこのことがバレていることになる。
「まさか自衛隊はこの状況にも関わらず俺達とドンパチやろうってことか。」
「・・・防衛省は知らない、これは俺の個人による情報ネットワークで知った、といえば納得するか?」
「そういうことにしておこう。」
なるほど、防衛省だけでなく、おそらく民間の裏で情報ネットワークを持っているということか。
彼だけとはいえ、警戒はしなければいけない。
「実際はどうなんだ?」
「・・・概要だけはあんたに話してやる。あんたの言う通り、国防軍は今回の新宿事案で動く。国防大臣直々の命令でな。」
「驚いたな、国防大臣自らが?」
「あぁ、詳しいことは言えないがな。」
正式には、河瀬2曹官が撮影した武装集団の証拠写真を国防大臣見せたところ、隠密による出動命令が出たのが始まりだ。
「武装集団の指導者が目的か。」
「そんなところだ。・・・なぜそんな事を聞く?」
敵情偵察としか言い様のない行動。
俺にはそう見えた。
これ以上しゃべるのは良くないだろう。
「・・・俺は国防軍を殲滅するために戦っているわけではない。」
「ならなぜあんたは戦う?」
「お前と同じだ。いつだか話をしてくれただろう、戦場の中で守るべきものは何かを。」
あの時か。
国防省での戦闘終了後、俺は三溝1曹と話をしながら国防省を目指した。
歩きながら俺はなぜ戦うのかと質問された。
(お前は自衛官を殺してまで何故戦う?)
(桜の心をなくした・・・理由になるか?)
(・・・それだけではなかろう、戦場で戦っているお前は、何かを考えているように見えた。)
(・・・・・。)
(確かにお前は強い、だが戦いの中で余計な事を考えればいつか死ぬことになる。)
(・・・分かっている。それでも俺は探し続ける。)
(何を探している?)
(答えだ、俺が守ろうとしているもの、いや守るべきものが何なのかを。俺は入隊前、守るための力が欲しかった。自衛隊にはいって、ポスター通り俺は家族や友人、そして国を守りたいと思った。・・・だが教育隊を卒業し部隊に配属された時に俺の考えは変わった。自衛隊は平和ボケの象徴だ、だから呑気にだらだらと戦争ごっこができる。これじゃいざというときに守るものも守れない、仲間である同期が自殺するほどの組織が日本を守れるのかと聞かれたら俺はすかさずNOと答える。そこからだ、守るべきものを見失い、俺が本当に守るべきものは何なのかと毎晩考えるようになった。自衛官を殺し、国防官になっても未だに答えは見つからない。俺は見つけるまで戦い続け、そして答えを見つけ出す。それだけのことだ。)
「俺には家族がいた。」
「・・・いた?」
「あぁ、昔はな。・・・地下鉄サリン事件で失った。当時俺は陸曹になったばかりだった。妻が子供を連れて友人宅に遊びに行く予定だったらしい。紙神にしがみつく愚かな宗教団体が起こしたサリン事件に巻き込まれ、死んだ。」
「・・・・・。」
俺は黙って彼の話を聞き続ける。
「家族を失った時俺は絶望した。守りたいと思い続けて守り続けてきた家族を失った。自分の弱さが家族を殺した。俺はそんな自分が許せず、苦痛を背負い続けるのがせめての罪滅ぼしと考え、レンジャー訓練など過酷な訓練を受け身体を痛め付けた。」
「そして今に至る・・・と。そして気づけば特戦群なんかやってて、平気で人を殺せるような人間になってしまったか。」
人間は恨みなどを抱えれば驚異的な力をもつことがある。
そのいい例が三溝1曹なのかもしれない。
「俺は守る力とはどんなものなのか、確かめたいと願った。だから俺は戦っている。」
俺は水を飲み干す。
「・・・俺から言わせて貰えば、守る力とは一定のものじゃない。俺達のように武器を手にして相手を殺し自分や大切な人を守る力、言葉という名の魔法で人同士話し合いを続け守っていく力、守る力ってのは様々だ。あんたが今探している力となれば、それはもう見つかったようなものだと思う。俺が言っている事、分かるか?」
「武器を手にし相手の命を犠牲にして守る力か。」
「まさしくそれだ。ただあんたは守るものを失っているだけの話なんだ。」
「・・・また見つけられるだろうか。」
「きっとな。」
「フッ、そうだな。」
三溝1曹は何やら安心したような感じだった。
俺はそれを気にすることなく黙々とおやじさんが出してくれた食べ物を口に入れた。