ダーク・ファンタジー小説
- Re: ★パンやの剣士さん!~3人のこい~★ ( No.4 )
- 日時: 2015/03/26 19:24
- 名前: みーこ ◆jdHxHHqZ4A (ID: wJ5a6rJS)
ガコッ
いきなり、緑の刀が真っ二つに折れた。
緑の顔は、赤色から真っ青に変化した。
「えっ……………」
汗が、流れ出る。
しかし、また、体制を立て直し、
折れた刀を、片手に緑は、紅に突進していった。
____________
「弱すぎだろ…」
退場のすれ違いざまに、紅は囁いてきた。
ビクン、と緑の体が震える。
「紅さんは、・・・強かったです」
言いたくない!言いたくない!
こんなこと、言いたくない!
「お前・・・道場で、何を習ってたんだよ!」
紅の迫力に押され、声が出ない。
「あうぅぅあくぁ・・・」
涙目になりながら、必死にしゃべろうとするけれど・・・
アイツは、緑の答えも聞かず、
建物の中へ消えていった。
「俺はぁ・・・・」
緑は、悔しくて悔しくて___
冷たいコンクリートの床に座り込んだまま、
人形のように、緑は、
動かなかった_____________________動けなかった。
「緑・・・」
いきなり、後ろから頭を掴まれた。
爪が、グイグイ食い込んでくる。
コイツ、躊躇を知らないのか?
痛みは、増していく。
「イテテテテテテテテテテ!」
顔を真っ赤にしながら、叫ぶ。
「イテーヨ!・・・・青!」
緑は、叫ぶ。
「あっ、ばれちゃった?
鷹の手を持つ、青様って呼んでね!」
「はいはい!鷹の手を持つ青様!痛いです!鷹に、手はねぇだろ!」
「ハイは、一回!」
「はいっ!」
返事をした後、緑は、勇気を振り絞り、言葉を発した。
「青………様。俺を、強くして下さい。」
ギュッと唇を噛んで、声を絞り出す。
「なんで?紅に勝ちたいから?」
即答だった。
何の迷いもなく、そう、言った。
緑は、コクンと頷く。
青は、残念、という顔をした。
「私はね、剣術は、
勝負のために習うものではないと思うよ。
大切なものを、守るために習うんだよ。
大会も、強さだけを競ってなんかない。
守る……大切なものを守る力を、競ってるんだよ。」
緑は、青のセリフで、泣き出してしまった。
「勝った奴より、負けた奴の方が、強くなるんだよ。
勝負は、勝つか負けるしかない。
そこで、神様は、緑を勝たせるために、今回は、負けるようにしたんだよ。
人間は、勝てば、努力をやめてしまう。
けれども、負ければ、次は勝とうって思って努力する。
そこで、差が開く。
だから、緑は、ここで負けたからって、努力をやめないで、ね。
私は、慰めたりはしないから。慰めは、甘やかすことになるから。」
「俺も……同情は、入りません。」
緑は、俯いた。
「ヨシッ!じゃあね!」
青は、そう言うと、手を振って帰って行った。
緑だけが、残された。
そこへ……………
「よっ!ヘナチョコ」
悔しい………
どうして、こんな奴に、
こんなこと、言われなきゃいけないんだよ!
なんで…………
「弱かったな。お前。」
「僕は………………………」
次の言葉を探すが……
「弱いから、言い訳をするんだよ!
言い訳をするから、弱いんだよ!
俺は、言い訳が嫌いだ。
言い訳なら、言うな。
それとも、宣戦布告ですか?
同じ、結果しか見えていないが、宣戦布告ですか?」
緑は、立ち上がった。
「俺は………」
「紅、お前を倒す!いつか、お前を倒す!」
「!………俺を……倒す?」
一歩、紅に緑は歩み寄る。
紅は、歩み寄った緑から、距離を取るように後ろへ後退りした。
「お前みたいな、ヘナチョコが俺を倒す?ハァ?」
「俺は………2度と、おメェに、負けない!」
アイツの目は、狩りの時の、ライオンのようだった。
「じゃあ………ショーブしようじゃねぇか!」
カシャン、と音を立て鞘から抜かれた刀は、
緑を、殺す準備が出来ている。
緑も、刀を出すが、アイツの刀より、短く弱そうだ。
「っ…………」
(頼む…………勝たせてくれ。)
俺の、願いは、神に届いただろうか。
ギュッと手に力を込める。
「うわぁぁぁぁぁ!」
叫びとともに、紅に向かって行く。
「遅い。」
紅は、一言呟く。
気がつくと、目の前にいたはずの紅は、
緑の真後ろで笑っていた。
「あ………………」
顔が、カァと熱くなる。
緑は、相手になどされていなかった。
紅は、余裕があるのか、手招きをする。
殺せるものなら、
殺してみろ(ヤッテミロ)と言われたような気がした。
ガクッと膝が曲がる。
「こっちは………力一杯なのに……」
「俺は、まだ全力、出してないからな。」
力の差って奴かよ______これが。
同じ、道場で習っても、
元からの才能があるかないかで、
力の差は、開いてしまう。
才能は、生まれつきだ。
努力は、才能には勝てない。
全て、『無駄な努力』だった……のか。
みんな、『無駄な努力はない』なんて、キレイゴト言いやがって。
今の、俺は………俺は………何なんだよ!
「もう、終わりか?俺、帰るな。」
紅の、大きな背中が、視界に入ってくる。
苦しい………
俺は………
今まで、何をしていたのだろう。
先生や、青に向ける顔がねぇ。