ダーク・ファンタジー小説
- Re: ★パンやの剣士さん!~3人のこい~★ ( No.6 )
- 日時: 2015/03/22 12:35
- 名前: みーこ ◆jdHxHHqZ4A (ID: wJ5a6rJS)
青は、紹介状を机に置いて、居眠りをしていた。
コクコク、と頭が動く。
また、パチっと目があく。
これが、もう10回以上は繰り返された。
明日、病院に行くこととなり、道場を休む、と決まった。
行きたいなぁ〜、そう、思っても、『自分のためだから』と言い聞かせる。
壁にかかった、白い道着が目に入ると、余計に思いが強まった。
でも、診察と検査だけだから………だから、午前中には、終わるよね?
午後から、行っても、間に合うはず。
青は、立ち上がり、バックに道着とタオルを詰め込んだ。
「絶対、行くよ。」
パチンッ
___また、世界から灯りが、一つ消えた。
______________
小鳥の囀りが、青の耳に飛び込んでくる。
朝か……。寝ぼけ眼をこすり、ゆっくりと、体を起こした。
床には、水色のタオルケットが落ち、
昨日の寝相が悪かったことを、暗示していた。
Tシャツと、短パンの姿になった青は、
バックを持ち、リビングに、そぉっと降りて行った。
時刻は、朝の6時30分。
もう、とっくにパンの仕込みが始まっているだろう。
道場、パン屋、
ふたつを掛け持ちしている父親は、凄いと思う。
朝は、パンを作り、昼は母親に店番を頼み、道場へ。
夕方に、戻って来るや否や、2回目のパン作りを始める。
店の、厨房からは、パンの匂いが微かに漂ってきていた。
お腹が、ギュルルルと鳴り、朝食の催促をする。
今日、食べてもいいのかな?
少しだけ、そう思い、出来たてのパンに手を伸ばした。
このパンは、形がおかしくなってしまったものなので、食べてもいいのだ。
ホカホカのパンは、火傷しそう。
「あちっ」
指先を、真っ赤にしながら口の中へ押し込む。
ゴクリ
喉を、パンが通り過ぎて行った。
(美味しかった!)
青は、満足♪と、家を出た。
おっと!!と、一度家に戻り、
母親の財布から、病院代&バス代を拝借した。
病院へは、バスで向かうのだ。
"拝借"したものは、ポケットの中へ突っ込まれた。
草履で、地面をこすりながら、バス停へ向かう。
朝の、空気は冷んやりして、心地良い。
真っ青な空は、青く澄み切り、飛んで行きたいくらいだ。
バス停に着くと、すでにバスが来ていた。
乗り込み、座席を取る。
ハミングで、適当に作曲した歌を、繰り返し歌う。
「フンフフーふふふっふっふっ♪」
ほとんど、客のいないバスは、
プシュー
と排気ブレーキが音を鳴らし、動き出した。
病院までは、1時間もかからないはず。
膝の上に、バックを置き、外の景色を眺める。
クラッ
またしても、貧血のような、症状が出た。
窓に、頭をぶつけ、ジンジンと痛む。
「イタタタ……」
"ドジな自分"は、こんな事でも、怪我をしかねない。
ハハハ、と苦笑いをする。
『次は〜大学病院前〜』
待ってましたぁと、青は立ち上がった。
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目の前に、いきなり青い髪の少女が現れ、
赤い髪の少年は驚いた。
伊達眼鏡をずらし、少女を眺める。
見たことある、そう思った。
「……青」
千光寺青
俺の、習っている道場のムスメ。
パン屋でもある、家庭に育ってか、早起き野郎。
遊びは、4時半でも、俺の迎えに来る。
迷彩柄のキャップを外し、身を乗り出す。
青の背中を、いきなり強く、押した。
よろっ
よろけたものの、
青は、前の座席に掴まり、立ち上がった。
「何スルンデスカァー?……見たことある、赤髪野郎だな。」
赤髪の少年は、ニヤリと笑い、言い返す。
「どっかで、見た覚えのある、青髮野郎か。」
ピキッ、と音を立て血管が10本切れた。
「野郎ではないです。」
そう、言い捨てバスを降りた。
振り返ると、赤髪野郎こと、
『市村紅』が、真っ赤な舌を出して、笑っていた。
紅?戦争に行ったはず………
パチっ
目が覚めた。
青は、バスの中。
前の席には、誰もいない。
(夢か………)
病院に入ると、青の苦手なあの臭いがした。
「ヴッ!」
鼻を摘み、カウンターへ急ぐ。
「はい。どうされましたか?」
「診察をお願いします。」
看護師が、バインダーに紙を挟み、青に渡す。
グイっと、押し付けられ、バシッと受け取った。
バインダーには、体温計ものせられていた。
「その紙に、質問されてること、全部書いて。体温も測って。」
すっかり、看護師の態度の悪さに、膨れた青は、
重い体を、ソファーに投げ出した。