ダーク・ファンタジー小説

Re: 命を売り買いする場所。 ( No.15 )
日時: 2018/06/07 17:07
名前: とりけらとぷす (ID: nA9aoCfQ)

みーこさん、コメントありがとうございます!

考えさせられる…ですか。

そんな風に思って貰えて、嬉しいです。

はい、勿論頑張らせて頂きます!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(シフティの昔話)

私は、ひとりぼっちだった。
つい先日、親友が売られ、貴族と結婚し、その子は奴隷から、貴族に身分が上がったらしい。
この前まで、一緒だったのに。
この牢屋で、一緒に過ごして、話して、笑っていた。
世の中って、不思議だ。この前までは、同じ身分だったのに、一つの変化で、全てが変わってしまう。
私と親友との距離が、一気に遠ざかった様に思えた。
私は、どんな辛い仕事でも、2人でなら頑張れた。こんな事、奴隷を気軽に売っている奴隷売りや、それを気軽に買う貴族たちなんかより、ずっとましだと思った。
なのにーーーーーーーー
あの日君は、私にこう言った。


「私ね、今日、売られるの」
「え……?」
仕事終わりに咄嗟に言われた一言に、私は息を飲んだ。売られる……?私はその時、まだ15歳で、子供で、世の中を知らなかった。ずっと、子供でいられると思っていた。そう、知らなかったんだ。146が、今日売られる事も。奴隷売りが、今日彼女を売り、貴族が彼女を買うことも。私達は、明らかに、ちょっとずつ、大人に近づいていたんだって。
私は、どうしようもない現実を突きつけられて、146にしがみついて泣くことしかできなかった。
そんな情けない私を見て、146は困ったような、悲しいような顔をして、口をキュッと結んでいた。
そして、私を突き放して、あっけなくこう言った。
「私、もう行かなきゃ。さよなら」
一瞬だった。
彼女が私からだんだん遠ざかっていく。
ーーーーーーーー行かないで。
そんな言葉が、私の脳裏を過る。
だけど、その言葉は頭を過るばかりで、私は彼女を追いかける事は出来なかっ
た。



あれから、何日たっただろう。
まだ気が沈んだまま、毎日をなんとなく過ごしていた。
味気ない日々。またこの日が戻ってきたと思うと、辛くてならない。
そんなある日、番人が特別な話があると言って、私達を牢屋の広間に集めた。
私は、気乗りしないまま、皆に紛れて広間へと足を運んだ。
そこで私は、広間の台に立つ、一人の天使を見た。
「皆、集まっただろうな?では、話を始めるとしよう」
番人は、台の上の天使を指差して、こう言った。
「今日から、ここの新入りだ。プレタリアの、奴隷番号390。皆、良くしてやってくれ」
プレタリア?皆、その言葉に動揺した。
ピンク色の綺麗な長い髪に、黄色い満月の様な瞳。
私が見た天使は、プレタリアだった。
「報告は以上、皆、持ち場にもどれ」
番人がそう言うと、皆は何もないように帰っていった。
その中でただ一人、私がうずくまっていた。
だけど、そんなことは、皆はどうでもいいようだ。
だって、私一人が悲しんだって、辛かったって、皆には関係ないのだから。
そんな中、私の前に、誰かが立ち止まり、近づいてきた。
「大丈夫ですか?」
顔を上げると、私の目の前は、ピンク色で覆われた。
そう、あの子だった。彼女は、心配そうに私を見た後、優しい声で、泣きたい時は泣いていいんですよ、と言った。
私は、その言葉を聞いて、中から、何か熱いものか込み上げてくるのを感じていた。
私は、また、泣いてしまった。誰も救ってくれない悲しみに、そして、彼女の優しさに。
閉じ込めていたものが一気に壊れるように、私の涙は止まることを知らなかった。あの日のように、彼女にしがみついてわんわん泣いた。
迷惑だってわかってるのに、年下の彼女に情けないところを見せてしまっていることは、見っともないことなのに、こうしているしかなかった。




一旦ここで切ります。