ダーク・ファンタジー小説
- Re: 命を売り買いする場所。 ( No.24 )
- 日時: 2015/07/10 14:28
- 名前: とりけらとぷす (ID: aW5Ed34M)
お久しぶりです。とりけらとぷすです。
この度、参照300突破!!
ご愛読ありがとうございます!
こんな亀更新なのに見てくださる方々がいるなんて…!
これからも調子により早かったり…遅かったり…を、繰り返すかもしれませんが、もし良かったら、また見に来てください( ´ ▽ ` )ノ
「何してるんだい?」
ふと声が聞こえて振り返ると、そこには40代くらいの女性が立っていた。
黒髪を後ろで一つに纏めて、黒いロングドレスに、ワイン色のカーディガンを羽織っている。
その人は、皆を見て優しく微笑んだ。
「アザレア婦人…」
ロベルトが、目を見開いて言った。
「あら、ロマーノじゃない。お友達もいて。さぁさぁ、こんなところじゃ何だから、上に行ってスープでも召し上がって?」
僕達の揉めている雰囲気に気づけていないのか、それとも、わかっていてその場を和こますために言ったのか。その人は、とにかく上へ、と僕らを灯台の最上階に案内した。
僕らは、ぎこちない空気が漂う中、気まずそうに押し黙って足を進めた。
「どうぞ、召し上がりなさい」
最上階に上がったや否や、アザレア婦人は僕らの為に温かいスープを作って、前に置いた。人参やら、ジャガイモやらがごろごろと入っている、この街伝統のスープだった。
「私はね、アザレア。ロマーノの…まぁ、そんな事はいいわ。冷めない内に召し上がって?お話は、それからにしましょう」
アザレア婦人は、そう言って、皆にお茶を入れはじめた。
ピカピカのポットや、お皿などを見ていると、この人はきっと、綺麗好きなんだと思った。見渡してみると、この部屋も綺麗だ。フローリングの床だけど、まるで大理石のように、僕らを映し出している。
しばらく黙って食べていると、前に座っているロベルトが、重い口を開いた。
「アザレア婦人…。こいつ、何も知らなかったんです」
”こいつ”というのは、たぶん僕の事だろう。何も知らなかったというのは、世間知らずという意味だろうか。
そんな事に些細ながら腹を立てている僕が、腹立たしい。
「そう、まぁ…レオ様だったかしら?10代でしょう?まだまだ若いし、子供だから…。そうね、まだ知るには早いから、お父様も言われなかったのかもしれないわね」
「だからって…!あいつのせいで、僕の父さんは…!」
いきり立つロベルトを、アザレア婦人は抑えて、女の人とは思えない低い声でこう呟いた。
「大人になったら、きっと、話しましょう」
それを聞いてロベルトは、拳を一掃硬く握った。
アザレア婦人は、この意味深な言葉を残して、下の階へ姿を消した。
アザレア婦人が出て行くと、ロベルトは僕の前へ出てきて、いつも通りの鋭い目つきで僕を見た。
また、何か言われるのだろうか。広場の石台に一人で登って、叫ぼうとした時は、怖くなかった。だけど、何故だろう。ロベルトが怖いのは。
傷つけられたから?正義を罵られたから?
自分をーーーーーーずるい人間だと言われかから?
そんな数知れない言葉が僕を苦しめていると、ロベルトは頭を下げた。
「え?」
「申し訳ありませんでした、レオ様。私の勝手な貴方の父上様による恨みから、貴方に強く当たってしまいました。本当に、申し訳ありません」
彼の行動に、目を疑った。謝ったのか……?でも、何故。
「いや、君が謝る事はない。だって君は、僕に大切な事を教えてくれたから」
自然とこの言葉が口から出てきたのに、自分自身驚いた。
そして、僕が、彼が謝ったことによって、彼を許したことに。さっきまでの胸が苦しめられる様な苦しみは、もうすっかり無くなってしまった。
昔、彼と父親の間に、何があったのかわからない。それは、とても深刻な事で、後で僕を巻き込むかもしれない。だけど、僕の父親が何かしたなら、それは、アルドリア一族の問題であり、僕の問題でもある。
390は、僕らの様子を見て、ホッとしたような表情を浮かべていた。