ダーク・ファンタジー小説

Re: 命を売り買いする場所。 ( No.30 )
日時: 2015/07/14 15:27
名前: とりけらとぷす (ID: 7I10YEue)




あれから、何となくぎこちない空気が、二人の間にあった。二人というのは、もちろん、僕とサクラのことで。
何となく話すのも気まずいし、会ったら目を逸らしてしまう。
二人とも、なんとなく遠くから互いを見ていた。
「何見てるんですか?レオ様」
背後から突然聞こえた声に、驚いて肩が上がった。
振り向いて見ると、其処にはロベルトの姿があった。
「何も見てないよ」
僕が目を逸らしながら言うと、ロベルトは、いつものようにニタニタと気味の悪い笑みを浮かべて僕に近づいてきた。
「あの子のこと、見てたでしょう」
そう言われて、どきりとした。自分でも気づけていない何かを、彼に見破られた気がしたからだろうか。
「なっ…。そんな訳ないだろ」
慌ててこう言ったが、ロベルトは何もかもお見通しだと言わんばかりににやりと笑みを浮かべた。
「さぁ…?では、何を見ていたんでしょうねぇ?」
「僕が知るか」
そう言って場所を移動しようとして(正確にはロベルトから逃げようとして)歩き始めた。
あの事があってから、僕とロベルトは仲が良くなったといえば、間違いかもしれない。僕達は、よく話すようになっていた。
一方的に、ロベルトが僕をからかいに来るといったほうが正しいのかもしれないが。
「あ、ちょっと待ってくださいよ、レオ様」
「今度は何だよ…」
僕が面倒臭さそうに返すと、ロベルトは真剣な顔をして、僕の耳に口を当てた。
「貴方に、伝えなければいけない事があります」
何故、ロベルトが小声で言うのかわからなかった。
でも、僕をからかっている時とは、目付きが違う。
前のように鋭い目付きで僕を見ていたのだから、きっと大切なことなのだろう。
「此処ではあれですから、灯台へいらっしゃいますか?」
場所を変えてまで話さなければいけないことなのだろうか。
疑問に思いながら、頷いた。
「それ程大事な用なのか?」
「ええ、とっても。僕にとってはあまり重要ではありませんがね。レオ様の心を、大きく左右してしまうかもしれない。それくらい、貴方にとっては大事な用ですよ」
「そうか」
僕らは、明日の夜に灯台で会う約束をして、別れた。
サクラが来てから、僕の正義感というものは、すごく、すごく小さくなってしまった気がする。
前は、全ての人を、奴隷という身分から解放したいと思っていた。
なのに、今はどうだろう。サクラ1人を奴隷という身分から解放したことで、満足してしまっている自分がいた。
”ありがとうございます”こう言って泣きながら笑った彼女が忘れられなくて。
もっと、笑ってほしいと思った。
でもーーーーーーーー彼女だけが笑っていて、いいのだろうか。
思い出せ、僕。僕がしたかったのは、サクラ1人を奴隷という身分から解放し、笑顔でいてほしいと願う事ではない。
ーーーーーーー僕は、皆を救わなければならないんだ。