ダーク・ファンタジー小説
- Re: 命を売り買いする場所。 ( No.34 )
- 日時: 2015/07/22 14:58
- 名前: とりけらとぷす (ID: z0poZTP7)
そう言って案内されたのは、アイルの部屋の反対側の青い扉の部屋だった。
「ここが、ロベルトの部屋か?」
「ええ、そうですよ」
見渡してみると、焦げ茶色と白で統一されたこの部屋は、とても彼らしかった。
奥には壁一面の本棚があって、其処には数え切れないほどの本が綺麗に並べられていた。
「300年前に、プレタリア狩りが行われたのは、ご存知ですよね?」
「ああ、知ってるよ」
「別名、魔女狩り」
「そんなことより、早く本題に入ってくれよ」
なぜ、ロベルトが急に300年前に行われたプレタリア狩りの事を話すのかよくわからなかった。
僕の事を、またからかって言っているのだろうか。
「そうですね。では、周りに聞かれないためにも小声で言うので、耳を貸してください」
僕は、耳を彼に寄せた。
「………ーーーーーーーー」
「え?嘘だろう?本当か?」
彼は、黙って頷いた。
「そんな…ーーーー。何故。何故なんだ?」
「王様の命令は、ゼッタイですから。何故なのかは、わかりませんよ」
だから、何もないのに夜警がうろついていたのか。
案外深刻な事実をつきつけられた僕は、戸惑っていた。
僕はどうすればいい。どうすれば…。
「もう、10時ですよ?帰らないといけないのではありませんか?」
「ああ、そ、そうだな」
なるほど、時計はもう10時を回っていた。
早く帰らないと、また、父親に怒られてしまう。
「あ、走って帰らないでも大丈夫ですよ。すでにお父様には、了承を得ていますから」
「ありがとう……」
そう言ってドアを開けようとした時だった。
「レオ様」
ロベルトの声が、後ろから聞こえたので、立ち止まる。
「貴方のバカみたいな正義で、なんとかしてくださいーーーー」
「え?」
「貴方なら、きっと出来ます。そう、信じていますから」
「何だよ、急に」
「皆を救うんでしょう……?」
僕は、ドアを開けて、部屋を出た。
「ああ」
そう、小さく呟いて、ドアを閉めた。
僕の頭の中は、不安や、怒りや、悲しみなど、多くの感情が入り混じって溶け出していた。
僕一人で、これをとめるのは無理だ。
”王様の命令はゼッタイ”いつから、こんな世の中になってしまったのだろう。
権力者は勝ち、やりたい放題、贅沢な暮らし。その反面、苦労して、毎日をやっとの事で生き長らえている人が大勢いる。
身分で分け隔たれた、大きな壁。それは、壊すことも、登ることも出来ない。とても、厄介なものだ。
僕が、一人大勢の権力者の前に立って何と言おうが、首を跳ねられるだけで、事は終わってしまう。
もっと、多くの人が必要だ。それも、権力者で。
しかし、毎日石台に奴隷を求めて集う狂った人達ばかりだ。そんなのは、無謀でしかない。
ロベルトの言葉を、僕が聞き間違えずに聞いていたとしたら、彼はきっとこう言った。”魔女狩りが始まります”と。
闇夜に、星が散りばめられていた。夜警の灯が、まだゆらゆらと動いている。
早く動かないと、間に合わなくなる。手遅れになってしまう。
僕は闇に包まれた小路地を、目を頼りにして歩いた。
夜は冷たい。それを一層、あの言葉が冷たくしていた。
この情報が、どうか…どうか、ただの噂でありますように。
そう、星に強く願った。
夜はまだまだ長い。暗い夜道は、僕の未来を写したようだったーーーー。