ダーク・ファンタジー小説

Re: 命を売り買いする場所。 ( No.37 )
日時: 2015/07/24 16:46
名前: とりけらとぷす (ID: P/XU6MHR)


第10話【Witch huntingーstartー】

王様から、こんな手紙が町中にばら撒かれた。

ーーー皆の者、よく聞け。この街には、魔女がいる。その魔女は、この街に災いをもたらすであろう。魔女が出たのは、100年ぶりであるが、100年前と同様、進めることとしよう。
皆の衆は、怪しき人を通報し、これに貢献するよう。……ーーー

ーーーーーこうして、魔女狩りが始まった…。

もうこの街に、これを知らない人などいない。
人々は、魔女に関係なく、自分が憎たらしいと思う人を、次々と通報していった。
そんな現実に目を向けなければいけないのに、僕は目を瞑ってしまった。
どうしたらいい。どうしたらいいんだ、僕は。
迷って、迷って…迷っている間に、犠牲者はどんどん増えていく。
早く、早くしないと…。
そうやって焦っても、結局答えは見出せなかった。
誰かと協力しないと。僕一人じゃ、無理だ。でも、誰と…ーーーーーー。
最近、現実を見るようになった僕は、すでにその時、諦めていたのかもしれない。
どうすればーーーーこの言葉は、頭の中をぐるぐると渦巻くだけで、答えなんて出してくれない。
このままでは、きっと、彼女は殺されてしまう。
「レオ様ー。もうすぐお勉強の時間ですよ?」
「ああ、そうだな。もうちょっとしたら行くよ」
「もう、遅れないで行って下さいね!遅れたら私が怒られてしまいますから」
「ちゃんと行くよ」
サクラはそう言って去っていった。いつものように、あの笑顔で笑って。
いつからだろう。この笑顔を守りたいと思ったのは。
それは多分、僕が彼女に名前を付けた時よりも、ずっと前からのように感じる。
僕がどうにかしないと、サクラはきっと…。
そう考えると、鳥肌が立ってきた。
今まで隣で笑っていた人が、急にいなくなったら、どんなだろうか。
そうなる前に、食い止めなければいけない。絶対に。
こうしている間に、人は殺されて続けているんだ。
罪のない人々が殺されるのを、黙って見ているわけにはいかない。
”大丈夫。僕なら、出来る。”
そう、心の中で唱えて、深呼吸した。



勉強部屋に入ると、そこにはもうロベルトの姿があった。
「どうですか?レオ様」
「どうですかって…どうもこうもないよ」
「もう始まりましたよ?動かなくていいのですか、と聞いているんです」
僕はーーーー。動かなければいけない。動かなければいけないのだけれど…。
「ロベルト。お前に頼みがある」
「何ですか?何なりとお申し付け下さい」
ロベルトは、きっと味方のはずだ。だから、きっと…。
「僕に、協力してほしい」
ロベルトは、僕の言葉を聞いて、何も反応しなかった。特に驚いた様子も伺えない。そして、顔色一つ変えずに、ロベルトは言った。
「いいですよ」
そして、待ってましたと言わんばかりに笑みを浮かべた。それは、いつものあのニタァとした笑い方でなく、素直な、そのままの彼の笑い方のようだった。
「では、どうしましょうか。しかし、人を集めるにも、一苦労ですよ。先にばれてしまったら、これですからね」
ロベルトはこう言って、人差し指で首を切るような動作をした。
王様の命令は絶対の世の中だ。僕らは、非国民として、避難されるだろう。そして、消される。
失敗は絶対に出来ない。何があろうと。
「貴方はもう知っているかもしれませんが、一応説明しておきますね。魔女狩りについて。そして、王様が、何故急にこんな事を始めたのかをーーーー」
ロベルトは、そう言って話し始めた。
そして、話を聞いてわかったことは、大きくこの三つだった。
1、魔女狩りの対象人物は、人間離れした者達(プレタリア、アルビノなど)や、目が青い人物。その他、疑わしいとされる者。いずれにせよ、女が対象であること。
2、魔女だと通報されたものは、火炙りの刑とする。通報したものは、それが魔女でなかった場合、打ち首の刑。魔女であるかどうかは、占い師が占って決めるということ。
3、王様が魔女狩りを始めた理由はーーーーー ………だということ。
「ところが実際、火炙りの刑は実行されていません」
「それは、何故だ?」
100年前と同じ方法なら、魔女と言われた人間は、火炙りにされていたはずだ。
「何故でしょうかね、それは、私にも分からないんですよ、ただ、確かなのはーーーーー。魔女と言われた人々が、一箇所に固められている、ということだけです」
ロベルトは時計を見て、もうこんな時間です。さぁ、勉強を始めましょう、といって教科書を開いた。
何故、王様は魔女を殺さず、一箇所に集めているのか。そこで、何をしているのか。
謎は、深まるばかりだった。