ダーク・ファンタジー小説

Re: 命を売り買いする場所。 ( No.43 )
日時: 2015/07/31 11:27
名前: とりけらとぷす (ID: 7jx1K2pT)


第11話【それぞれの約束を果たすために】


今、僕は父親と母親のいる部屋に向かっている。
ロベルトは2日前、3日で人を集めると言っていた。
だから、僕も、それを果たさなければならない。
だけど、僕はなかなか決心出来ずにいた。また、何か言われるだろうか。結局、何もなかったかのように終わってしまうんじゃないか。
また、傷ついて、サクラに励まされて…それを繰り返している間に、彼女は何処かへ行ってしまうのでは…。
そんな考えが、頭の中を渦巻いて、2日間、何も行動出来ずにいた。
ーーーーーー犠牲者は出ていない。まだ、時間はある。
そんな甘い考えでは、だめだとわかっているのに。
”一箇所に集められている”ということは、まとめて一気に火炙りの刑を執行する事かもしれないのに。
でも、もう、決めた。今日は、2人の成果発表の日だ。
ロベルトは、人を集めてくる。僕は、父親と母親に相談して、解決策を導き出す。
たったそれだけのことなのに、引き返したいと思っている僕がいた。
昨日、約束したんだ。朝の10時に、広間で話があるから来てくれ、と。
父親も、母親も、すんなりと了承してくれた。
自分から言いだしたのに、そこへ行かないのは、約束破りだ。
もう、決めた。大丈夫だから。
そう、心で何度も呟いて、広間へ向かった。



ーーー10時。僕は、広間の前で立ち尽くしていた。
ドアノブに、手を掛ける。何が怖いのか、その手は、そこまでしか動いてくれない。
手からは、汗が滲み出していた。指先が、微かに震えている。
心臓が、どっくんどっくんと、僕を急かすように早く動いている。
下に押すだけ。たったこれだけのことをするのに、とても時間が掛かった。
「父上、母上、入るよ」
もう、勢いだと思った。入ってしまえば、話すしかない。
「レオ、もう来てたのか」
ドアを開けたと同時に、後ろから父の声がして、僕はすっかり腰を抜かしてしまった。
「何で転けてるんだ?」
「え?ううん、何でもない…」
「ミレイは急遽、貴族婦人総会に出ることになったから、私だけになるが、話は聞いてやるぞ」
ということは、母親の助け舟はなし、か。
「ありがとう、父上。では、話を始めよう。どうぞ、中へ」
心臓がバクバクしていた。この音が、父親に聞こえていませんように。そう願って、中へ入った。