ダーク・ファンタジー小説

Re: 命を売り買いする場所。 ( No.44 )
日時: 2015/08/06 15:49
名前: とりけらとぷす (ID: V9P9JhRA)

「父上。父上は、魔女狩りについてどう思われる?」
父親がソファにどかっと腰を下ろしたところで、僕は早速話し始めた。
父親は、いつもと変わらない、上からの態度で僕を見下ろすようにしている。
また、いつも通り、鼻で笑われるだろうと覚悟して、父親の目をじっと見つめた。
「魔女狩り…か。また何かやらかすつもりじゃないだろうな、レオ。それにしても、もうお前の耳に届いていたとはな。お前には優秀な使いがいるからか。魔女狩りをどう思うだって?王様の決めた事だ。お前は、何に怒っている。もし、お前が刃向かったとしても、アルドリア一族の名誉が無くなり、お前は死ぬだけだ。馬鹿なことはやめるんだな」
「やめない」
「え?何だって?」
「やめないって言ったんだ」
僕は、よりいっそう強く言った。
やっぱり、僕の思っていた通りだ。父親は、僕を止めようとした。でもそれは、僕の為に言っているのではないことなど、とっくの昔にわかっていた。
「父上は、そうやって、いつも僕を止める。だけど、それは僕の為じゃない。国や、名誉や、何よりも、自分のプライドや地位を守る為じゃないか。まだ、人々は殺されていないといえ、いつ殺されるのかわかったものじゃない。父上は、何も思わないのか?罪のない人々が殺されるのに。何も思わないって言うのか!名誉が何なんだ。地位が何なんだ。王様が間違っているなら、誰がどう修正すればいい?王様が絶対なら、間違っていたって放っておけと言うのか?そんなの間違ってるって、誰かが言わないと、何も変わらないじゃないか!」
僕はつい、いきり立ってしまった。
押さえ込んでいた感情が爆発するかのように、自然と、言葉が溢れ出てしまったのだ。
「…すまない。父上にこんな事を言ってしまって…。本当は、こんな事が言いたいんじゃなかったんだ」
父親は、とても驚いていた。何かを言い返そうともなく、ただ、僕をじっと見つめていた。
「そうだな。俺はいつも、自分の事しか考えてない、酷い父親だ」
ぼそりと、父親はそうつぶやいたかと思うと、席を立った。
「父上、何処へ行く」
僕は心配になって父親の手を握った。
「ついて来い」
「何処へ行くんだ?」
「いいから、ついて来い」
僕はよくわからないまま、父親の後をついて歩いた。
父親のことを、傷つけてしまったのではないだろうか。
そう思うと、凄く胸が痛んだ。
ーーーーーー僕と父親は、似ている。
僕が小さい頃、よく母がこう言っていた。
今なら、似ているわけがないと言えるけれど。
そもそも、僕と父親が似ているなんて到底思えないのだが。
僕は、父親を見上げた。
金髪の髪、青い目は、確かに父親譲りだ。
そう思うと、どことなく僕らは似ていると思った。