ダーク・ファンタジー小説

Re: 命を売り買いする場所。 ( No.45 )
日時: 2015/08/06 16:17
名前: とりけらとぷす (ID: V9P9JhRA)


「父上、話とは何なんだ?」
僕が連れて来られたのは、海だった。
日はだんだんと沈んでいって、海の中に沈んでいく。
あの青い海はどこへやら、海は紅に染まっていた。
父親は、僕の質問に答えず、じっと海の遠くの方を見ている。
話しかけたらいけないのか、話しかけてもいいのか。
よくわからなかったから、僕も海を見た。
今は満潮のようで、海はどんどんこちらに迫ってくる。
このままここにいたら、飲み込まれてしまうような気がした。
「なぁ、レオ。海の向こうを見てみろ」
ぼそりと、呟くように父親は言った。
「見てるよ」
「もっと、もっと向こうを見るんだ。海の果てを」
「そんなの、無理だ」
「いいから、見るんだ」
海の向こうなんか見えるはずないのに、父親はこう言った。
無茶なことを言うものだ。
付いて来いと言うから、何か解決策を見つけてくれると思ったのに。
僕は父親に失望しながら、海の向こうを、地平線を見た。
こうもよく海をじっくり見たことは無かったけど、良く見てみると、少しずつカーブを描いている。
ゆらゆらと揺らめいて、太陽を呑み込んでいく。
「海の向こうに答えはある」
父親は、また呟くように言った。独り言なのか、僕に言ったのかわからなかった。
海の向こうに答えはある…?僕には理解できなかった。
僕らは日がすっかりしずんでしまってから、何もなかったように夜の街を帰っていった。
約束は果たしたけど、得たものは何一つないような気がした。