ダーク・ファンタジー小説
- Re: 命を売り買いする場所。 ( No.53 )
- 日時: 2015/09/05 16:20
- 名前: とりけらとぷす (ID: 344/XKJR)
【お知らせ】
いつの間にか参照600突破!!
いつも読んで下さっている方、私の作品をクリックしてくれた方、ありがとうございます!
久しぶりの投稿です!
ちょっと涼しくなってきたからヤル気が出てきたとか言ってたくせに全然更新してなくてすみませんm(__)m
長らくお待たせしました(汗)
以下、本文です↓
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ロベルトに肩を貸してやると言った僕だが、大人の彼は重くて、今にも押しつぶされてしまいそうだった。
熱で感覚が麻痺しているのか、物凄く僕の方に体重を掛けているように思う。
「ロベルトー…。大丈夫か?」
「はいぃ…?」
「あのさ、もうちょっと自分で歩けないか?」
「すみません…」
上の階の部屋の明かりが見えてきた。もう少しだ。
この階段を上るのに、どれだけ時間が掛かったんだろう。
ただでさえ、この階段を上るのは大変なのに、ロベルトを背負っているようなものだから、大変どころじゃ済まない。
「えっと…。アザレア婦人ー!いるのかー?今ちょっと手が塞がっていて開けられないんだ!」
最上階にようやく到達したところで僕はドアに向かって叫んだ。
ドアが開く。隙間から光が漏れてくると同時に見えてきたのは、あの時の少女だった。
そう、ロベルトの妹だというあの金髪の女の子だ。
「…え?お兄ちゃん…?」
熱でぐたりとなったロベルトを見て、アイルは目を大きく見開いた。
「ロベルト、熱なんだ。だから、僕がここまで運んできた。アザレア婦人はいるか?」
アイルはこくりと頷いて、キッチンの部屋へ走っていった。
僕は、とりあえず引きずりぎみになりながらも、ロベルトを部屋の中へといれ、ソファに寝かせた。
アザレア婦人はすぐに水とタオルを持ってアイルとともに駆けつけてくれた。
「まあ…なんてことでしょう…。酷い熱だわ」
アザレア婦人は顔色一つ変えずにこう言った。
言葉だけ聞くと大惨事が起こったみたいなのに、真顔でそれを言うものだから、何だかおかしかった。
「ごめんなさいね。うちのロマーノが迷惑かけて。それにしても、あの後仲が良くなったのね。良かったわ」
「ああ。それにしても、ロベルト大丈夫なのか?」
「ええ。この子なら大丈夫よ。貴方、夕飯まだでしょう?お腹すいたんじゃない?丁度夕飯が出来たところなの。良かったら食べていって」
「ありがとう」
階段を上るのが必死で忘れていたが、思い出すとお腹がきゅうに鳴った。
「貴族のお方、ありがとうです…」
アザレア婦人がキッチンの方へ行くと、アイルは僕に言った。
やっぱり敬語の使い方が可笑しいな、と思って笑った。
「お礼はいいよ。いつもロベルトにはお世話になってるしね。あと、僕は貴族のお方じゃなくて、レオっていうんだ」
「レオ…。何だかライオンみたい」
そう言ってアイルはくすくすと笑った。
これがこの子の笑い方なのか、からかわれているのかわからなかったため、僕は苦笑した。
「アイルは、ライオン知ってるのか?」
「うん。見たことあるですよ。顔の周りにふさふさってした髪の毛が生えてる動物」
見たことがあるという言葉に驚いた。
「え、見たことあるのか!?」
「アイルの部屋にいるですよ」
「部屋に?」
「特別に、レイオンにだけ見せてあげるです。お礼です」
「何だか僕の名前ライオンと混じってるよ。僕の名前はレオだよ」
アイルは、僕を部屋へと案内し、入れてくれた。
「目、瞑っててくださいです」
そう言うと、布のようなもので僕の目が見えないようにくくりつけた。
これじゃあ、目を開けていようと閉じていようと同じなのに。
そう考えて少し可笑しくて笑った。
「目、開けてもいいですよ」
そう言われて、僕は巻かれていた布を外した。
「がおー!!」
目の前には、ライオンの姿、そしてそれが勢いよく飛びかかってきた。
「うわああっ」
僕は驚いて腰を抜かしてしまった。
飛びかかって来たものを見ると、小さい。
そして、それは明らかにぬいぐるみだった。
それを確認したところで、僕はつい笑ってしまった。
ライオンってこれのことか…って。
確かにリアルだが、可愛らしいぬいぐるみ。
首には、”Ailu”と書かれた赤いリボンが巻いてある。
仕掛けてきたアイルの方へ目をやると、僕が情けない声を出して転けたことがよほど面白かったのか、お腹を抱えてけたけたと笑っていた。