ダーク・ファンタジー小説

Re: 命を売り買いする場所。 ( No.6 )
日時: 2015/04/12 15:11
名前: とりけらとぷす (ID: DXOeJDi3)


第3話【カエルノコハカエル】(父親目線)

ドアを閉めてから、深いため息を吐いた。
ドアの向こうでレオが泣いている。あんな事を言ってしまった事を、少し後悔した。
私だって、昔は違った。人間を売り買いする姿を見て、酷いと思ったし、自分がなんとかしなくてはと努めた。その為に、私の人生は無駄になってしまった。



ーーーーーーー十年前。


「おーい、カナリオ、準備は出来たかー?」
こう叫ぶのは、十代の友達のピエタだ。
「ああ、出来たさ。カウントダウン開始だ」
俺達は、今から奴隷を逃がす計画を実行しようとしている。二人だけだが、子供だから、大人も不審に思わないだろう。牢屋の高い天井に重い石を隠し、ピエタが番人と話している間に、その石を俺が番人の頭に落とす。シュミレーションは何度もしたから、大丈夫だと思っていた。世間を知らない俺は、絶対に成功すると思っていた。
番人は、一人で牢屋を守っている。牢屋の鍵も、番人が持っている。その一つの鍵で、牢屋は皆開く。
「10」
「9」
「8」
「7」
「よし、ピエタ。行ってこい!」
「ちゃんと石、落せよな。3で、俺は避けるから」
「任せとけ」
ピエタが番人の方に行って、何やら話し始めた。
俺は、カウントダウンを開始した。
「6、5、4」
事前に牢屋の壁の石を割っていたのを、ゆっくりひっぱり出す。
「3、落とすぞ」
ピエタが、番人から遠のいた。俺は、石を番人の頭目掛けて落とす。
ゴンっと、鈍い音がした。番人が倒れている。鍵を抜き取れば、成功だ。
俺は、下に下りて、ピエタと手を取り合った。
「やったぞ、ピエタ!」
「やったな、カナリオ!よくやった!」
「これで、奴隷を解放できる!」
俺は、番人のポケットの中にある鍵を取り出した。
「えっ・・・」
鍵に生暖く、赤い血がまとわりついている。
「カナリオ、どうした?早く行こう」
「ああ、そうだな」
俺は、近くの水道で、赤い血を流した。
そして、何もなかったように、ピエタのいる方へ走った。
「よし、始めよう」
牢屋を、一つ、二つと開けてゆく。
「ありがとうございます。このご恩は、一生忘れません」
皆こう言って、牢屋から出て行った。
「なあ、ピエタ。俺達、ヒーローみたいだな」
ピエタは笑って、
「いや、ヒーローみたいじゃなくて、ヒーローだよ。僕ら二人は、英雄だ」
嬉くて、二人で飛び跳ねて喜んだ。この街の奴隷は、皆解放された。




まだ、あの生温い血の感触が手に残っていた。










一旦ここで切らせて頂きます(・ω・)ノ