ダーク・ファンタジー小説

Re: 命を売り買いする場所。 ( No.75 )
日時: 2016/01/26 14:09
名前: とりけらとぷす (ID: Ib5HX0ru)



「それでは、始めましょう」

そう言っておじさんは部屋に明かりを灯した。
部屋は意外と広く、10畳ほどあった。ところどころに下と同じように高貴なドレスが飾られている。白を基調としたこの部屋は何故か殺風景に思えた。
それからおじさんはどこからかテーブルとイスを持ってきて、僕らはそこへ座らせてもらった。

「これが、この街の地図です。私の手書きですが」

そう言ってロベルトが取り出したのは両手に収まるほどの小さな地図だった。

「この地下道を通りましょう。昔鉱石が発掘されていた場所です。今は誰も通る者はいないでしょう」

ロベルトは地図の左隅を指していった。その指は迷路のように上に行ったり下に行ったりしながら、やがて地図の丁度真ん中で止まった。

「ここは?」

僕が聞くと、ロベルトは静かに言った。

「王宮です」

「王宮…!?それってまずいんじゃないのか?」

王様はただでさえ僕達の敵だというのに、王宮に近づくなんて危険すぎる。

「ってことは、この街は王宮のある都市部ということなのか?」

慌てる僕を見て、おじさんは静かに笑った。

「いいえ。違いますよ。私達の街は、都市部の東に位置するいわば城下街のようなものです。ウェストリアーーーここの言葉で、王に仕える街という意味です」

「レオ様は本当、地図に弱いですね」

ロベルトがぼそりと呟いて、たちまち三人は笑いに包まれた。

「話を戻しますが、王宮まで行って、その地下通路を通ります。そこは私の調べでは長年使われていない様ですから、大丈夫でしょう」

「確証はあるのか?」

「……ありません。でも、レオ様が危険な目に遭われた場合、私が全力で御守りします」

ロベルトはそうドヤ顔で言うが、格闘技なんて一つも習っていないはずだ。
その自身はどこからくるものなのだろうと、おかしくてつい笑ってしまった。

「私も御守りしますよ。レオ様」

向かいに座っていたおじさんもそう言って笑った。

「僕だって、自分の身くらい自分で守れるよ」

少し意地を張って言うと、まぁ、お互い守り合いましょう、とおじさんが優しく言ってくれた。


作戦会議は順調に進んでいる。まだ、誰も気づいていない。
ロベルトは地図を使って何度も説明し、僕は全てを頭に叩き込んだ。
その時、僕達はまだ知らなかった。


これから始まる全てが、仕組まれていたことを。


気づかぬうちに王様の手の中で転がされていただけだということをーーー


僕達はまだ、知る由も無かった。