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ダーク・ファンタジー小説
- Re: 命を売り買いする場所。 ( No.77 )
- 日時: 2016/04/09 17:43
- 名前: とりけらとぷす (ID: FOqQFS6Q)
第16話【地下道を行く】
いよいよ、この時が来た。皆持ってきた荷物をまとめ、背負う。
これから始まることに心臓が高鳴るのを感じていた。
成功するだろうか。もししっぱいしたらどうしよう。いざとなると混乱しそうになる。だめだ。平常心を保たないと。失敗してはいけない。これは、皆のため……いや…。皆の為だけじゃない。僕の頭の中にぼんやり浮かんでくるのはいつもあの子だ。
「準備はいいですか」
外は暗い。周りは誰もいない。松明を持った夜間警察も、人も。あの賑わっていた場所がまるで嘘だったように、辺りはしぃんと静まり返っている。
僕は深く頷いた。
地下道の中は冷たくて、その上湿っていて、土の匂いがした。暗い地下道に明かりを灯す。松明だとバレるといけないからといって、おじさんが小さなランプを人数分用意してくれていた。
「怖いんですか?」
ロベルトが僕を覗き込んだ。
僕は「まさか」と笑って返す。でも、頬が引き攣っているのがわかった。
怖いんじゃない。不安なだけだ。これを人は怖いと言うのだろうか。
「大丈夫ですよ、きっと」
「そうだな」
僕達は地下道を歩いた。歩くたびに下に溜まった地下水が足に染み込んでくる。どこからか、ぽたん、ぽたんと水の滴る音が聞こえた。
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