ダーク・ファンタジー小説

Re: 命を売り買いする場所。 ( No.8 )
日時: 2015/04/22 17:01
名前: とりけらとぷす (ID: 2DtFjIhe)


第4話【冷たい夜が明ける】

体の節々が鳴いている。僕はいつの間にか、寝てしまっていたようだ。
カーテンを開けると、闇の世界が広がっていた。月は雲に隠されてしまって、真っ暗な街に、夜警の火だけがゆらゆらと光っている。
「情けない・・・。こんな事で、泣くなんて。まだ、何もしてないじゃないか。」
カーテンを閉め、ドアを開ようとすると、ドアが中途半端に開いた。何か物がつっかえているらしい。何とかその隙間から出ると、父親の横たわる姿が目に入った。
「父上・・・!」
僕は、何とも苛立たしく思った。僕が泣いているのを、ドアの前で聞いていたというのか?きっと、またいつもの様に鼻で笑っていたに違いない。いや、きっとそうだ。
拳に力が入る。だめだ。殴ってはいけない。
大理石の床に映る自分を見て、ひどい顔だと思った。そして、父親の顔も、ひどい顔だ。僕がこんなヤツから生まれたと思うと、腹が立ってしょうがない。
大理石を踏みつけるようにして、廊下を歩いた。足で廊下を踏むたびに、ブーツの硬い底が、大理石をかーんかーんと響かせる。
「頼むから、レオ。私みたいにならないでくれ」
父親の声が、遠くの方で聞こえたような気がした。
「ええ、父上のようには、絶対ならない。絶対にだ」
自分で言い聞かせるように、ぼそりと呟いた。
言葉にしないと、今にも逃げ出してしまいそうだからだ。父親の言ったこともそう。一部は正しい。母親も同じことを言ったのだから、間違い無いのだろう。
僕は、馬鹿だった。世間を知らずに大人の世界に口出しするものじゃない。
屋敷の大きな扉を開けた。誰も知らない夜の街は、とても冷たくて、悲しげだった。