ダーク・ファンタジー小説

Re: 命を売り買いする場所。 ( No.86 )
日時: 2016/09/03 15:57
名前: とりけらとぷす (ID: VNx.OVCe)


【お知らせ】

この度、夏期小説大会にて、銅賞を頂きました!
これからも、皆さんの期待に応えられる作品になる様、頑張っていこうと思います。


それでは、ほぼ半年ぶりの本編です。


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第17話 【松明の夜】


暫く地下道を歩いていると、だんだんと足が痺れてきた。あの不気味な足音はもはや聞こえなくなり、ぴたぴたと僕達の歩く音だけが静かに響いていた。

「まだ着かないのか……」

「まだまだですよ、レオ坊ちゃん」

レンツェさんはすっかり疲れた顔で僕に微笑みかけた。牧師さんというだけあって、どこか緊張や苦しみを和らげられたような気がした。

「ロベルトは生きてるか……?さっきから何も…」

そう言って振り返った時だった。朦朧とし始めた頭に何か違和感を感じた。そこにあるのは、ただただ長くて暗い地下道があるばかり。そこに、人影はなかった。
ロベルトは……?おじさんは………?
そういえば、おじさんはいつからいなかっただろう。地下道へ入った時はいた。では、僕が足音が聞こえると言った時は?
おじさんは、いつからいなかったんだ?
様々な疑問が浮かび上がってきて、朦朧とし始めた頭はもっとずっとこんがらがってきて、何が何だか解らなくなりそうになる。
あの、昔話ーーーーそうだ、父親がしてくれた昔話と同じだ。おじさんが消え、ロベルトが消えて……次に消えるのは、僕かレンツェさんのどちらか1人ーーー。
ひとまず冷静になるために、僕は足を止めた。今僕が持っているものは、地下道の地図と、身の危険があったらと、いつも持ち歩いている短刀。レンツェさんは牧師だし、きっと良い人だ。でも、ロベルトがいないとなると、僕の身を守る人がいない訳で、それは大変危険だ。なんとかして、この状況を回避せねば。レンツェさんはそこそこ年を取っている。牧師さんだという。しかし、それが偽造であったら?王宮の者でしか出入りする事のない地下道だ。勝手に侵入したとしたら、重い罪になる。なのに、何故レンツェさんはしっていたのか。牧師が地下道を通って王宮へ行くはずがない。王が雇う牧師には、僕も父が秘書である為会ったことがあるが、レンツェさんでは無かった。

「どうかしましたか、レオ坊ちゃん」

だとしたら、本当に、何故知っているのか。

「大丈夫ですか」

だとしたら、何故…。

「レオ坊ちゃん」

「レンツェさんは…本当に、牧師なのか」

僕が言うと、レンツェさんは驚いて目を丸くしていた。

「ロベルトがいない。おじさんも、いないんだ。レンツェさんは、気づかなかったのか」

僕はまた、地下道の何かに惑わされているのだろうか。本当は言ってはいけない事を言っている気がする。
これでもし、レンツェさんが味方じゃなかったら……。






次に消えるのは、きっとこの”僕”だ。