ダーク・ファンタジー小説

Re: 命を売り買いする場所。 ( No.9 )
日時: 2015/05/01 07:06
名前: とりけらとぷす (ID: 16oSxNwZ)

暗い夜道を歩いていると、広場の方に、オレンジ色の灯りが見えた。
「夜警かっ?」
思わず、裏路地に身を隠した。だが、よくよく見てみると、誰かが、灯りを持って座っている。こんな時間に、誰がーーーーーーー。
「灯さん。あなたは、私を許してくれますか?」
女の子の声だった。足音を潜めて、近くの壁まで移動する。そこには、僕と同じくらいの女の子が、灯りを持って座っていた。灯に、話しかけてるーーーーー。
彼女の顔は、暗くてよく見えなかったが、白い布を着ているのがわかった。
ーーーーーーあの子、奴隷の子だ。
この街では、貴族は黒、奴隷は白のものを身につけることが決まっている。しかし、こんな夜に、奴隷なら、なおさら出られないはずだ。奴隷の消灯時間は、10時と決まっているはずなのに、何故。僕は、女の子に気付かれないように、そうっと距離を縮めていっ
た。
女の子は、まだ灯に話しかけている。
「灯さん、灯さん。私、明日売られるんです。街の広場で、この、石台で。私、みんなのさらし者にされるんです。いつも、自由時間の時、この石台に群がる人達を、ずっと見てました。昔、姉が売られました。ほんとの姉じゃないけど。私にとって、姉のような存在だったんです。でもーーーーーー今は、一人ぼっち。売られるなら、もう、いっそーーーーー。灯さん、私を、殺して下さい」
女の子が、灯りを自分の首に当てようとするのを見て、思わず飛び出した。
「止めるんだッ!」
女の子の持っている灯りを手で払った。その瞬間、バランスを崩して転倒する。
「きゃあ!」
僕は、彼女の上に乗った状態になってしまった。どうしよう。押し倒してしまった事への罪悪感が僕を襲う。
「あの…君、死のうとしてた?」
女の子は、ガタガタ震えていた。
「な、貴族の方…。お願いです、許してください。酷いことはしないでっ!」
と、涙声で言った。
この体勢がマズイことに気づき、急いで女の子から離れる。
「…何もしないんですか?」
「何もしないよ。ただ、君の自殺行為を止めただけだ」
それを聞いて、女の子はホッとしたように肩を下ろした。
「君、奴隷の子だろ?抜け出して来たのか?」
「ええ。私は…明日」
「”売られる”んだろ?」
女の子は、びっくりしたようにめを見開いた。
「全部聞いてた」
「私は、どの様な処分を…」
「処分はしない。」
「え?」
「僕と君は、同じ人間だから」
僕の言葉を聞いて、女の子は嬉しそうな、でも、泣きそうな顔をした。その時、彼女の目から流れる涙が金色に光って見えた気がした。
「そんなこと、言ってくれる人なんていませんでしたから。ごめんなさい」
朝日が、徐々に街に光を入れていった。
「見て、朝日だ」
僕は、街の灯台の方を指した。
「ああ、もう来ちゃいましたか、今日が。最後に、貴方様に会えて良かった。良かったら、お名前を教えてくださいませんか?」
そう言いながら、涙を流している女の子は、微笑んだ。その時、女の子の綺麗な薄ピンク色の長い髪がなびいた。
「アルドリア・レオだ。君は?」