ダーク・ファンタジー小説

Re: 命を売り買いする場所。 ( No.91 )
日時: 2018/07/19 13:03
名前: とりけらとぷす (ID: P747iv5N)


だんだん視界がひらけてきて、大きな振動と共に止まったのは王宮の食料庫か何処かだろうか。まだ少し地下の冷たい空気を含んでいる空間だった。
あの召使いは迎えを呼んだと言っていたが、何処にもそれらしき人はいない。
食料庫の中を探し回っていると、後ろでガチャンと言う音がした。
ーーーーー嫌な予感がした。
その僕の予感は的中していたようで、エレベーターはまた上へと上っていってしまった。
あの錆びた巻上げ機から想像するに、止まったりすることもあるだろうに、僕は迂闊にもエレベーターを降りてしまった。
食料庫と思われた部屋は、どうやら資料室でもあったらしく、今では使われていないのか、歩くたびに埃が舞った。
隙間からの採光を頼りに出口の扉までたどり着いたものの、錆びているのか鍵がかかっているのか開けられない。

「またエレベーターが来るまで待つか…地上に近いみたいだし…」

僕が脱力して本棚にもたれかかっった時だった。相当古いもので脆くなっていたのだろうか、ミシと木にヒビが入る音がしたかと思うと、本棚から本がどさっと落ちてきた。

「……っ」

本当にもう、災難ばっかりだ。
落ちてきた書物を睨みつけると、その書物の中に気になる題があった。

「王宮回路図……?」

随分と分厚い本だった。赤い表紙に、金色で印字されている。埃をかぶっていたものの払ってみると本自体は意外と綺麗な状態だった。

もしかすると、僕が今何処にいるのかわかるかもしれない。

些細ながらも差した希望の光だった。
ページをめくっていくと、王宮の内部が細やかに描かれていた。

「地下一階…資料室……多分これだ!他に出口は……さっき開けようとしたところと……それ、だけ…」

出口はひとつ…エレベーターもここにちゃんと止まるとは限らないし、乗り方を間違えたら挟まれて死んでしまう。
僕がまた絶望の淵に浸りながら、訳もなくページをめくっていると、一枚の紙が挟まれていた。手にとってみると、何やらか細い字で書かれている。

『頭上◻◻王の座◻◻◻。王◻◻国は滅び◻◻』

随分古いものなのだろう、読めるのはこれだけだった。少し虫が食っていたり、インクが薄まっていたりして判断できない。

「頭上に王の座…?…まさか、いや、そんなわけ…」

何となく天井を見渡してみると、天井に不自然な丸が刻まれているのが見えた。

「そんな、馬鹿なこと、あるわけない」

自分に期待するなと言い聞かせながらも、僕は丈夫そうな本棚を見つけ、登っていた。
あっという間に本棚の上まで登ると、天井に不自然な切り込みがあった。
力一杯押してみると、はしごのようなものが見えた。何処まで続いているのかわからない。ただ、そのはしごのずっと先に、かすかに白い光を帯びている気がする。

「…落ちたら大変だ。慎重にいかないと……」

その時、僕はここから脱出することばかり考えていて、重要なことに気づけなかった。
僕はこの後、このことを後悔することになる。