ダーク・ファンタジー小説

Re: 狐の嫁入り ( No.1 )
日時: 2015/05/13 17:24
名前: 鶴魏 (ID: 7WA3pLQ0)

『サチ様ー!』
ドタドタ

すーっ

『ここにおられましたか。サチ様。』

襖を開ければ美しい狐の耳と尻尾が生えている女がいた。
女。サチは窓際におり、無表情で外を眺めていた。

『朝食の準備ができました。お支度が終わり次第、食卓の方へ。』
『…………ねぇ。蘭丸。』
『はい?』

部屋を出ようと襖を開けた子狐。蘭丸は、呼び止められ不思議に思いながらも返事をした。

『人間界には、どうしたらいけるのかしらね。』
『サ、サチ様!人間界は恐ろしいところです!特に陰陽師といいう奴らは土蜘蛛をも倒す強さですぞ!!危険です!!行ってはなりません!!』
『ふふふ。安心なさい。行くとは言っておりません。人間の脅威は私も重々承知しております。』
『うっ。そうですよね。良っかたぁ。』

人間界。
その昔、狐の一族は人間に滅ぼされそうになった。
その時の狐の一族は妖力が高く、普通の人間では倒せない一族だった。
そのため、陰陽師とかいう妖怪退治を専門としている者達が力をふるった。

(らしいのだけれど。今の時代。人間界に行ったものはいない。)

ギリッ

『!』

(奴らなら…奴らならあいつ等を!)

『サチ様!』
『!』
『どうかなされたのですか?すごい殺気でございましたが?』
『………。』

サチの手は握りすぎたのか血が出ていた。

『わっ!血が出てる!治療!治療!』

サチの血を見て慌て回る蘭丸を見てサチは小さく笑みをこぼした。

『ふふふ。心配かけてごめんなさい。そこに包帯があるから取ってくれる?』
『あっ。はい!』

サチが指差した棚の中から包帯を出した蘭丸はそれをさちにわたした。

『ありがとう。さて、きっと要様が待ちくたびれているわ。食卓へ行きましょう。』
『!はい!』

器用に包帯を巻き終えたサチは立ち上がり食卓へとあるきだした。
そんなサチの後ろを

(サチ様も要様も幸せそうです!こんな日々がいつまでも続きますように!!)

満面の笑みでついて行く蘭丸だった。