ダーク・ファンタジー小説
- Re: 最凶男のひまつぶし ( No.5 )
- 日時: 2012/07/04 21:00
- 名前: Mr,ピーナッツ (ID: 8cTIMUus)
桂馬は、学校に着くなり唯の近くに居る事にした。いつ、悪質な悪戯が起こるか分からないから。
幸い、朝の時間帯は全員遊びに喋りに大盛り上がりで、唯の方を見ている奴が一人もいなかった。
俺は、クラスメイトと軽く言葉を交わしながら、朝休みが終わるまで待っていた。そして、チャイムが鳴ると全員が席へと戻る。
朝休みが終わると、全員宿題をやり忘れた奴は宿題をするのだが、宿題を終えた者達が次々と唯の元へと向かっている。俺も席を立ち、唯の近くへと向かう。
唯は俯いてなるべく顔を見られないようにしている。すると、クラスの女子のリーダーとも言える安藤綾音が唯の机を叩いて
「なぁ唯ちゃあん、何でそんな下向いてるのぉ?」
安藤は唯の表情を伺う様にニヤニヤと見ている。唯はなおも俯いたままだ。
すると、突然ドアが開き、安藤の取り巻きの女子数名がバケツに水を入れてこちらへやって来るなり安藤に
「きっと目が冴えないんでしょーから目を覚まさせてあげません?」
「いいわね!ねぇ、唯ちゃんも感謝してよねぇ。親切なあたし達がアンタの目を覚まさせてあげるんだから」
あげる、の部分を強調して言った安藤は、取り巻き達に「やって」と言うと離れる。取り巻き達はバケツを揺らしてクラス中にカウントダウンを求めている。
「はーい全員で!さん!に!いち!ぜろー!」
バケツの中の水が唯へと飛び散る。俺はその瞬間を見逃さず、唯の頬に水滴が触れた瞬間に心の中で叫んだ。『ストップ!』
ピタッ——
クラスが静寂に包まれる。全員の動きが止まっているのだが、周りの時間は動いている。さて、担任が来るまでにやる事がある。
まず唯を椅子から移動させて、水が掛からない程度の場所に立たせる。そして水から遠ざけた後、大声で先生達を呼んだ。
「先生!!ちょっと来てください!!!」
その声に反応した他クラスの担任、強面の担任から優男の担任までがこちらへ来る。丁度ウチの怖い担任もやって来て、なんだなんだと歩み寄ってくる。
そして、先生達が教室へ入ってきた瞬間時間を動かした。『スタート!』
バッシャアアン!
唯の席に水がかかり、クラス中が大爆笑に包まれているところにやって来た数名の教師達。犯行現場はばっちりと見ている。
その瞬間、クラスの唯と桂馬を除く全員が唖然となった。
見事に重なった教師陣の怒声に、クラス中は震え上がった——
——俺と唯以外は2ヶ月間の停学
2ヶ月、というのはやり過ぎではないかという声が上がったが、実に長い期間虐められていた事が判明すると、それが妥当かと満場一致で解決したという。
現在、他クラスからざわざわと人が集まっている。それはそうだ。だってクラスに2人しか来ていないなんて見たことも無い。そんな珍しい光景はそうそうお目にかかれないだろう。
桂馬はそんな事を思いながら、昼休み終了のチャイムが鳴り終わるのを待っていた。
@廃校舎屋上
誰も使うことの無くなった廃校舎の上で、彼は背中の筒を降ろすと中から全長2〜3mはある銃を取り出した。形状からするに狙撃型のライフルであろう。この大きさだから弾の威力と飛距離も恐ろしい。
そんな優れものを持った彼が標的に定めたのは——桂馬と唯の二人だった。
彼は銃口のすぐ隣に付いているレバー状の物を引っ張ると、銃口が数センチ開き、開いた銃口の端が変形した後に銃口の形を作っていく。
ロボの変形の様に変わり、一つの銃に二つの銃口があるという不思議な武器へと変わった。
”狙撃手”クローバー
「……本当にいいのー?当たるかは分かんないけど、二人に当たりそうになったら桂馬君って”選択”しなきゃダメなんでしょ?」
クローバーの問いに、公人は嬉しそうに答える
——選択させるのさ。桂馬君がどちらを選ぶか、どっちにしたって人は死ぬのさ。
「うーわ、悪趣味だー!悪趣味野郎だー!」
——悪趣味っ……。……まぁいいや、さっさとやっちゃって。
悪趣味、という言葉は心に刺さったのか、少し言葉が詰まった。
クローバーは渋々という顔をしながら
「分かってるよ……僕だって恋愛よりアクションの方が好きだし。」
クローバーはそう言って弾を込めた。