ダーク・ファンタジー小説

Re: Amnesia ( No.12 )
日時: 2015/05/30 18:48
名前: のれり (ID: R4l9RSpR)

    「舞には兄弟はいたりするの?」

一瞬にして静まり返った。心なしか、部屋の温度が下がった気がする。
今は6月であり、もうじっとしているだけで、汗が流れてくるくらいなのに、
私の全身に鳥肌が立っていた。

私の背中につ—っと冷たい汗が流れた。

私は、舞の顔を見ようとしたが舞はうつむいてしまっており、表情をかくにんすることはできなかった。

だが、舞の髪がかぜでなびき、一瞬だけ、ちらりと舞の顔がみえた。

「ま…舞…?」

舞の顔は怒りで歪んでいた。…ようにみえた。

すると、舞はいきなり顔を上げた。

舞の顔は笑っていた。

「はい、いますよ。双子の兄が…」

「…そ、うなんだ。こ、今度遊びにおいでよ。2人 で…さ…」

「…はい。じゃあ、お言葉にあまえて…明日なんてどうですか…?」

舞は笑っている。

「あ、うん。だいじょうぶ」
「じゃあ、また明日。今日はありがとうございました」
舞はペコリと軽く会釈すると、部屋から出て行った。

舞は部屋から出て行くまでずっと笑顔だった。

たしかに、笑っていた。

あれは、きっと見間違いなんだ。

舞の瞳だけが笑っていないなんて。

舞の瞳が狂気に満ちたような瞳だったなんて——……。